小説 川崎サイト

 

雨の日曜の自宅勤務


 吉村は自宅警備員ではないが家で仕事をしている。そのため、ずっと家に常駐していることになるが、流石にそれでは息が詰まるので、折を見て外に出る。その折とは区切り。その区切りとは朝は食べたあと。食べると眠くなる。特に雨の降る日は。
 色々と怠いのだろう。それで朝からまた寝るわけにはいかないので、散歩に出る。まだ仕事前だ。そこまでは出勤前の準備と変わらない。
 ところがその日は雨で、しかも強い降り。既に春とはいえ肌寒い。傘を差しても風があるので、濡れるだろう。朝から水かけ不動さんでは疲れる。一日の始まりなのだ。そこで体力を損ないたくはない。
 それに日曜なので、散歩の途中で寄る喫茶店も休み。その先にもう一店あるが雨では足を伸ばしにくい。それで散歩はやめた。
 朝食は食卓ではなく、作業机の前で食べている。そこにモニターが二つある。メインとサブ。そういうのを見ながら食べている。モニターにはまだ仕事のものではなく、ニュースとかSNSなどの画面のまま。
 食べたあと、何処にも出掛けないのなら、その状態のまま。
 これは頭を切り替えにくい。それに真っ先にやる仕事は、仕事の段取り。一番頭を多く使うところで、シャキッとしていないとできない。しかし、食べたあとはだらっとしている。だからこそ、散歩に出て頭を切り替えていたのだ。それが効かない。
 このままでは食後の気持ちよさのまま過ごしてしまうことになる。仕事モードに入れない。
 そこで吉村はコンビニへ行くことにした。これは近いし、自転車で行けばすぐだ。偶然煙草が切れかかっている。だから用事もある。いつもなら散歩の戻り道に買うのだが、今日はできない。
 それでコンビニへ出るための用意をする。特にコンビニ用のファッションがあるわけではない。散歩に行くときと同じ服装だ。それに着替えると調子が出てきた。散歩に出るのと変わらない。これもまた散歩。
 コンビニはすぐについた。雨で少し濡れたが、僅かな距離。問題はない。体力も消耗しないだろう。
 煙草と一緒にパンも買う。これは昼食だ。これで用事を二つ果たしたことになる。ついでに紙パックのコーヒーも買う。最初から甘味も生クリームも入っている甘ったるいタイプだが、そのまま飲めるのでいい。捨てるのは紙カップだけで済む。
 これで三つの用を果たしたことになる。散歩に出たときに済ませる用件と同じ。だから散歩なのだ。
 そして戻ってきて着替える。冷蔵庫に紙パックを入れる。もうそれだけで、何処かに出掛けて、戻って来たような気になる。
 これで頭を切り替えることができたので、仕事を始めた。
 雨は昼になってもやまない。昼は食べに行くのだが、それを予測してパンを買っているので、行かなくてもいい。しかし行った方がいい区切りになり、ダレてきた頭も新しくなることを知っている。昼は駅前まで出て、そこにある飲食街で食べる。馴染みの店が数軒あり、その日によって違う店に入る。食べたいものが日によって違う。
 駅前は近くのコンビニよりも多くの人と行き交う。閉じ籠もっていると、そういう群れの中に混ざりたくなるのだろう。
 そして仕事も疲れてきたところで、昼になり、パンを食べたのだが、そのあとの散歩はないので、そのまま横になり、昼寝した。
 この昼寝は頭の切り替え効果が非常に高い。昼を食べに行くよりも、夢の中を彷徨う方が区切りの変化が大きい。そういう夢を見ることは、昼寝では無理なのは分かっている。うとっとするだけで、夢など見ないことが多いが、意識が中断するだけでもいい。
 昼寝後、雨は小雨になり、やみそうなので、散歩に出ることにした。昼は食べたので、駅前ではなく、木々の多い公園方面へ向かうことにした。
 在宅仕事。頭を切り替え、仕事モードに入るためのスイッチを自前で作らないと、だらだらいってしまう。
 それだけの小さな話。
 
   了


2020年4月15日

小説 川崎サイト