「可能性があれば、やってみればどうでしょうか」
「可能性はある」
「じゃあ、それに賭けるべきです」
「賭けかね……私の場合は」
「ギャンブルではありません。可能性の問題です」
「博打ではしょうがない」
「博打ではありません。少しでもその可能性が見いだせるのであれば、そちらへ進むのがよろしいかと」
「少しでもかね……私の場合は」
「やればできるかと思いますが」
「無責任な」
「やった者だけが成功します。行動を起こした者だけが可能性の門を開けられます」
「やらなければ、その可能性もないか」
「そういうことです」
「私の場合、可能性は低い」
「ですから、やられない人も多いのです。これで、ぐんと数が減ります」
「数の問題じゃない」
「成功への勇気を」
「君はリスクを考えないのかね」
「それを考えると動けません。失敗はないのです」
「しかし、私にはありありと失敗する姿が見えておる」
「自信を持ってください」
「失敗した人数を数えたことはあるかね」
「その発想が失敗を招くのです」
「発想じゃない。事実を言ってる。失敗し、リスクを抱え込んだ人間の存在が見えんわけではあるまい」
「あなたの可能性は絶無ですか?」
「ないわけではない」
「では、無理な話ではないと」
「もしかして、うまく行くかもしれない」
「その灯火が大事なのです」
「誰でもそれは持っておるだろ」
「その灯火は、あなたを導く灯台です」
「それも、みんな思っていることだ。それで全員がうまく行けばいいが、そうじゃない。うまく行かなかった人間のほうが多いのが現実だ。失敗すれば、時間と金の無駄だ」
「しかし、可能性を信じた者だけが成功します」
「誰だって信じてやってるんだ。特別な心掛けじゃない。当たり前のことじゃないか」
「より強く信じた者が成功の美酒に酔えます」
「君の言葉に私も酔いそうだ」
「その感じで、ぜひやってみてください」
「私も君のようなアドバイザーになりたいよ」
「背中を押すのが仕事ですから」
「それで、何人突き落とした」
「成功の可能性はあります」
「相変わらず現実を見ない人だなあ」
「恐れ入ります」
了
2007年8月15日
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