小説 川崎サイト

 

座る神具


 第一世代がやり始め、第二世代が大いに発展させ、第三世代が安定させた。
「わしは神様と呼ばれておるが、貧乏神。若い頃に住んでいたアパートからは出たが一間が二間になっただけ」
「伝説の人です。神話の中の神様と私はいま会っているのですね」
「そんな神が万年床に座っておるか」
「それ、丸めて背もたれ、座椅子。いやソファーかもしれません」
「うむ、あと二つ両脇に蒲団をくっつければな。しかし、芯がない」
「はい」
「昔はねえ、私の一間のアパートに仲間が大勢寄り集まっていたもので、座布団がない。だから敷き布団を敷いたもんだ」
「伝説の巨大座布団ですね」
「だから、ただの寝具だよ。敷き布団」
「寝具ではなく神具だと言われていました。そこに座れば、良い事が起こると」
「そうだね、私は道を付けたが、その長座布団に座って、いや乗っていた連中は私の付けた道の向こう側へと進んだ」
「きら星のような人達ですね」
「そうだね」
「僕はもういい年をしているのですが、第四世代になります」
「もうやることがないだろ。やることがありすぎたのは第二世代まで。第三世代はそれを整理しただけで、もう終わっていた」
「僕はその終わった後の世代です」
「先ほども言ったように、もうやることは残っていないだろ」
「まだ、残りクズのようなのが」
「そうか」
「そこでです」
「なんじゃ」
「神具に座りたいのです」
「長座布団のことか」
「そうです。超有名な第二世代の大先輩たちと同じように、座りたいのです。いえ、乗りたいのです」
「そんなもの、もうないよ」
「今ので、結構です」
「今の、今のといっても客が来たときに出す蒲団しかないが」
「それで結構です。掛け布団は必要ではありません。敷き布団を」
 神様は押し入れを開け、蒲団の上に乗っているややこしいものを取り除き、掛け布団を横にやり、敷き布団を抜き出した。
 そして、畳の上の邪魔なものを端に押しやり、敷地を作って、そこに蒲団を敷いた。
「はははー」
 と、客はかしこまりながら、その敷き布団の真ん中に座った。
「満足か」
「はい」
 結局得をしたのは第二世代と第三世代までで、第一世代は恵まれないまま一間が二間になった程度で終わっている。
 この客、第四世代だが、実は第三世代にギリギリ入れるところだったのだが、世に出るのが遅かった。
 第一世代と第四世代、結構仲がいい。
 
   了



2020年6月30日

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