小説 川崎サイト

 

期待


 期待していたものが大したことはなく、期待していなかったものが非常によかったりすることがある。では、この期待とは何だろう。外れるものだろうか。しかし期待とは、その外れが少なく、思っているものに近いものがあるので、期待する。前回よかったので今回もと。
 期待していて、さほどでもなかったもののレベルと、期待してなかったのだが意外とよかったというもののレベルは、期待していたものの方が高くても、期待していたほどのことはなかったことで、値が下がる。決して期待していなかったのだが、意外とよかったものよりも下ではなく、上なのだが。
 ただ期待しているものは、期待中の時間がよかったりする。期待していないものにはそれがない。
 期待していたものがそうではなかったという経験を何度か得ると、期待するのが怖くなる。もしかして、思っているものとは違うのではないかと。そして期待外れという目に遭う。どういう目だろう。決してひどい目に遭うわけではないのだが、思っていたほどのことではなかったことで、がっかりする。
 また、期待しているものに対しては、それなりの情報を得ており、それなりに知っていることがある。映画の予告編を先に見てしまったようなもので、予告編を超える本編はほとんどない。予告編の方がよかったりする。
 意外性というのは予備知識がないとき、来やすい。熟知していると大方のところは分かっているため、意外性の出番が少ない。
 期待以上のものを期待することがある。これは期待以上によかった場合は、かなりいいだろう。
 意外性というのは範囲内から超えた場合。これは期待以上なので、素晴らしい。しかし期待しすぎると、それに至らない場合、期待外れとなる。だが、それなりに期待している程度なら、期待通りになる。不満はないだろう。要するに期待のしすぎは本来の期待を超える期待なので、期待する側に無理がある。
 期待していなかったのだが、意外とよかったというものは、今度は期待するようになる。ノーマークだったのだが、マークしてしまう。期待できると。しかし、ここからまた同じことが起こり、期待以下になると、がっかりする。
 変な期待、妙な期待はしない方がいいのだが、期待する楽しさがある。期待を楽しむのだ。だからずっと期待しているだけの方がよかったりする。
 何に期待するのかは、その人によって違う。妙なところばかり期待している場合もあり、これは確率が低いだろう。
 期待していたものが、どうやら期待できないと思われたとき、意外といける可能性もある。期待できないと思っているためだ。期待していなかったのだが意外といけると。
 あらぬ期待。それは思わない方がいいのだが、期待中はいいものだ。
 
   了

 

 


2020年8月12日

小説 川崎サイト