小説 川崎サイト

 

シースルー少女の微笑み


 超能力者と噂される少女がいた。それを発見した毛羽博士は後悔した。その能力は主に透視。
 噂が噂を呼び、テレビ局に達した。
 公開の場で、生放送でその能力を試すためだ。透視少女、これはスケスケの服装ではないがシースルー少女と名付けられた。
 番組の主旨は決まっている。偽物であることを晒すこと。
 サイコなのでサイコロを振るわけではないが、出た目を当てること。サイコロは一つ。
 サイコロは振られ、ツボを開ける。三十回振り、三十回とも外れた。
 ツボの中のサイコロが見えなかったのだろうか。
 次は数字当て、十枚の木札が用意され、一から十までの数字が書かれている。横一列にトランプのように裏返して十枚並べる。そしてかき混ぜる。そして並べ直す。
 木札は分厚い。サイコロのツボよりも。
 これも少女は全部外す。
 似たような透視実験をさらに続けたが、正解は一度もない。
 これで決まりだ。
 少女を見出した毛羽博士は公開の場では能力が発揮できないとか、色々説明するが、言い訳にもなっていない。
 それで、この少女には透視能力がないと判定。それが番組の主旨なので、そちらへと盛り上がった。
 少女は嘘をついていた。彼女を見出した毛羽博士も当然大恥をかいた。
 だが、毛羽博士は決して恥じていない。
 少女の能力に逆に仰天した。
 立会人の中の一人が、何か意見を言おうとしたが、司会者が割って入り、他の立会人の声で、かき消された。
 毛羽博士はほっとした。
 何故なら、その立会人の意見が怖かったのだ。おそらく言い当てているだろう。
 それは当たらないということだ。
 サイコロを三十回以上振った。でたらめを言っても一度どぐらい正解する。
 数字の木札も、一つぐらい当たるだろう。
 そのあとも、似たような実験だった。
 そして最後の実験では二択だ。確率は五割。それを何度繰り返しても、一度も当たらない。
 毛羽博士が少女に指示したのは、全部外せということだった。
 少女は見事に外した。
 立会人の一人がそのことに気付いたのだが、発言を止められた。
 少女は芝居ができない。
 言われた通り見事外すことができたので、満足の笑みを浮かべた。
 
   了


  


2020年9月19日

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