小説 川崎サイト

 

一日一畳


 予定通り進めば、どんな事柄でも気持ちがいいもの。事を済ませたので。
 その事柄はそれで終わるわけではないが、予定しているところまでいった場合、その区切りだけでも十分で、問題は予定通りに行ったことだろう。
 この予定は可能なことで、不可能な予定は予定の中に入らないだろう。予定外だが夢としての存在。
 予測というのは悪い面も入る。何が予測されるか分からない場合、悪い側に出るかもしれないし、また思わぬ可能性も秘めている。予定に比べ、予測は曖昧。だが予測して予定を立てる。予定なので現実的、具体的。
 どうでもいいようなことでも予定通り行かないといい感じにならない。予定とは自分が決めたこと。その決め事通りに行かないと決め方が悪かったのか、または予測外の妨害が入ったため。それで納得できれば問題はない。
 予定通り行くと、また予定を立てたくなる。何か一仕事したような気になる。小さな満足感。それが美味しいのだろう。その美味しさをまた味わいたいので、予定を立て、実行する。
 それはつまらないことでもいい。自分で企てたものが実現すれば、それだけで十分。
 ただ予定にも色々なものがある。タワシを買いに行く予定もあれば、旅行に行く予定。また儲け話の予定もあれば、もっとプライベートな予定もある。
 予定はしていてもなかなか実行に移さない予定もあるし、予定になくてもやってしまうこともある。
 だが、普段から多くのことを予定していると、急にそれと遭遇しても、予定したものなので、さっとできるだろう。考えなくてもいい。既に予定を立てているときに考えたのだから。
 当然タイミングが合わなければ予定通り実行できない。揃うものが揃わないと。
 たとえば部屋の掃除。これは全部やることはない。一畳でもいい。初日は半畳でもいい。その面だけを掃除する。これはできるだろう。畳の部屋なら何もないところを選んで、その半畳、正方形の面だけを掃除する。何もないところなので、片付けようがない。しかしそこだけ箒で掃くとか、畳が汚れておれば、そこを拭き取ればいい。これならできるだろう。
 次の日から一畳に増やす。半畳と似たようなもの。それをどんどん増やすわけではない。それなら苦しくなってくる。だから一日一畳でいい。気が向けば二畳してもいい程度。
 最初の半畳をクリアすれば、立てた予定をクリアしたことになる。まさに予定通り。そのとき少しだけ美味しい。
 部屋を掃除する予定を立てるのは嫌だが、一畳だけならいい。実行できそうなので。
 小さな達成感。僅かながらの満足感。これが牽引力になる。
 ただの小手先の技だが、これが意外と強かったりする。
 
   了

 


 


2020年11月10日

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