「頑張らない人にはフォローがないんですねえ」
「またそういう話か。君は楽して稼ごうと考えているんだろ」
「最低限の努力はしますよ。嫌々ですがね。ここは我慢しますよ。それに稼ごうとも思ってませんよ。必死で頑張っていないんですから、それ相当の収入でいいんです。でもこの場合熱意がない、やる気がないと見なされてフォローどころかペナルティーですよ。減点です」
「それは仕方ないだろ」
「減点で減収ですよ。それって損じゃないですか。仕事はやってますよ」
「その仕事ぶりが緩いんだろ。仕事量が少ないくせに給料は同じだと、仕事量が多い人は文句を言うだろ」
「以前はそんなことなかったのになあ」
「どちらにしてもだ。やる気のない人間は追いやられる」
「理不尽だなあ」
「まあ、心を入れ替えて、やる気のあるところを見せることだね」
「どうやって？」
「心を入れ替える方法までは知らないよ」
「それはいいから、見える方法」
「何が？」
「やる気があるように見える」
「ああ、そっちか。そっちは簡単じゃないか」
「どうするんですか？」
「忙しそうな立ち振る舞いをやればいい」
「忙しいのは嫌ですよ」
「ふりだ」
「ふり？」
「忙しそうに見せればいいんだ。オフィス内では速足で歩くとか」
「そんなことやれば、仕事が捗ってしまいますよ」
「いつものペースでやればいいんだ。ただ必死でやっているような表情や仕草でね」
「その過剰な演技のほうが疲れるんじゃないですか」
「だったら、普通に早くやればいいんだ」
「楽するのは無理なんだなあ」
「まあ、そっちの方向は歓迎されないからね」
「なんとか楽をやろうとする努力は報われませんか」
「逆方向だからね」
「頑張れない人こそフォローが必要じゃないですか」
「それは個人が管理することだよ」
「そういうタイプの人はどうすればいいんですかね」
「悪へ走るしかないねえ」
「悪者にはなれませんよ」
「もうなっているじゃないか。社内では」
「はあ……」
　
　　　了
　
　
　


　　　　　　　　　　2007年9月3日