「人が欲しがっているものを欲しがるって、結構当たってますねえ」
「えっ？　いきなりそんなこと聞かれても答えられないよ。深い意味がありそうなので、その関係性とかを考える時間が欲しいなあ」
「そうですね。日頃考えるような話じゃないですしね」
「そうそう、そんなこと聞かれたのは初めてだから、答え方が難しいなあ」
「単純に考えてください」
「僕の場合、どうしてそんな質問をするのかなあ……と、先に考える癖があって、問いかけの中身をあまり考えないんです」
「それは私に対しての、何か、ですね」
「どういう魂胆で聞いたのか……です」
「つまり、私の心を覗いたのですね」
「そのつもりはないけど、妙な話だから」
「妙？」
「人が欲しがる……何とかという話です」
「人が欲しがるものを欲しがる……です」
「じゃ、真面に考えてみます。君は真面な人だから」
「だから……」
「真面じゃなく、純粋そうなので」
「それで？」
「純粋に聞きたいのかと受け止めれそうなので」
「ああ、純粋かどうかは分からないけど、単純な興味で聞いただけです」
「それは、僕を選んでのことでかな」
「そうです。あなたなら気楽に答えてくれそうなので」
「自分が欲しがっているものは、実は他人が欲しがっているものとなると、自分が欲しがっているものではないことになりますねえ」
「長く言えばそういうこと」
「お腹がすいたとかは、自分が欲しがっていることだろ。他人の腹ではなく、自分の腹」
「ああ、そうですねえ」
「だから、欲しがっているものによって違うでしょ」
「ああ、なるほど。すべてじゃなかった」
「でも、どうしてそんなこと聞いたのかな？」
「私もおかしいと思っていたのです」
「確かに、誰かが欲しがっているものを先に買うと気持ちいいです。欲の先取りかな。自分も不思議と欲しくなってくるなあ」
「それを言っているのです」
「そうなの？」
「だから、そういう人が身近にいると欲が深くなる」
「だから、どうなのかな？」
「いや、そういうことを単純に考えていただけ」
「最近欲しいものがないんだなあ。きっとそういう人がいないからかな」
「だと、思う」
　
　　　了
　
　
　



　　　　　　　　　　2007年9月4日