小説 川崎サイト

 

午前の用事


 津軽は午前中に用事ができた。それで早い目に起きようと思ったのだが、寝過ごした。それでもいつもと同じような時間なので、遅く起きてきたわけではないが、早い目を狙っていただけに残念。
 それで朝の雑用も短い目に進めた。顔を洗ったり、朝食の準備をし、食べたりというような、毎日やっていることを少し急いだ。
 午前中にやってしまわないといけない作業があり、それもテキパキとこなした。やればできるもので、早くやれば早くできる。しかし、毎日ならしんどいだろう。朝から忙しい思いをしたくない。
 だが、何度もあるようなことではないので、その日に限ってのこと。急にできた用事を済ませれば、あとはゆっくりできる。というより、いつものペースに戻れる。
 急いでいるのは今だけで、すぐに終わるだろう。
 そしていつもより早く済ませたので、約束の時間には十分間に合う。
 ただ、早く起きておれば、急ぐこともなかったのだが、それは仕方がない。
 それで間に合う時間に家を出た。約束場所まで自転車に乗って数十分。半時間はかからないところにある公園。
 たまに通る公園なので、道順も分かっている。最短距離で行ける。問題は何もない。
 朝の用事を急いで済ませたので、何とかなったのだろう。
 こういうときに限って公園までの途中、何かが起こり、遅れることがありそうだ。何の支障もなく、すんなりいくとは限らないが、特に今日はそんな不安が頭をよぎる。
 うまくできすぎている。早い目に起きられなかったが、雑用を早く済ませたので、余裕が生まれるほど。
 そして順調に自転車で進んでいると、もう半ばまで来た。小さな川があり、その横を通っている。公園は右側に見えてくるはず。
 木が植わっているので、すぐに分かる。桜のはずだが、八重桜だったと思われる。ソメイヨシノが散ったあと、咲いていたのを思い出す。去年ではなく一昨年の記憶だが。去年も咲いており、その前を通ったはずだが、記憶にない。
 前方から幅のある車が来る。道が狭いので、津軽は路肩すれすれのところまで避ける。左側は川だが、ガードレールがあるので、問題はないだろう。
 車はゴミの回収車。すれ違うとき、ギリギリではなく、まだ余裕があった。
 そして、公園の入口が見えてきた。
 相手は、その中にいるのだろう。
 津軽は、恐る恐る公園内に自転車を入れた。
 
   了

 
 


2021年2月24日

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