小説 川崎サイト

 

一週間のご無沙汰


 しばらく行っていないところへ行くと、様子が違う。よくあることだ。
 一週間ぶりなら様子は同じだろう。ほとんど変わっていない。様子が違うと思うのは本人の問題かもしれない。
 それまで毎日通っていた場所。だから慣れている場所のはずだが、日を置くと初めての場所ではないのに、何故かギクシャクする。たったの一週間なのにと思いながら佐沼は違和感を覚えた。そこは日常的な場所、普段の場所。気にも留めないほどあたりまえの場所。
 佐沼は用事が出来て、一週間ほど行っていなかっただけ。たったそれだけなのに、この違和感は何だろう。当然様変わりなどしていない。これまでと同じ場所。
 まさか場所を違えたのではないかと思うほどだが、そんなことはあり得ない。やはり日を置いたためだろう。
 これも翌日から続けて通えば、普段通りの場所になるはず。
 考えられることは、日々ということ。毎日ということ。元の感覚の場所に戻るには日々が必要なのかもしれない。
 初めての場所ならそんな違和感はない。慣れていないことを最初から分かっているため。
 だが、考え方を変えれば、しばらくご無沙汰の場所は新鮮だともいえる。
 大きく違うよりも、少しだけ違う方が違和感としては大きいのかもしれない。ある程度知っているため。
 だからまったく知らない方が受け入れやすい。
 しかし、何故違和感を感じるのかを、もう少し佐沼は考えた。それは暖房だろう。暖房が強いのだ。冬なのでありがたいが、ムッとするほど暑い。一日の中で、ここが一番暖かい場所のようだ。この一週間ほど、こんな暖かい空気の場所はなかった。
 違和感は場所ではなく、空気なのかもしれない。
 様子が違う違和感は、暖房だった。そう佐沼は解釈した。他のことは同じだろう。一週間前に行ったときも、暑かったはず。それを忘れていたのは、いつも暖房が強いわけではないため。
 一週間前までは毎日行っていた場所。慣れている場所なのに、妙に落ち着かない。
 しかし、よくあることで、他の事柄でもよくある。そのうち溶け込んでいくだろう。そして毎日繰り返すことで徐々に違和感も消え、あたりまえの何でもない場所に戻るはず。
 慣れというのは曲者だ。
 
   了
 
 


2021年3月12日

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