小説 川崎サイト

 

暗い目をした男


 高田はその組織ではトップクラス。エース。押しも押されもしない不動の存在。しかし、組織内に押しやすいので押されっぱなしの人がいた。篠崎。
 高田とは同期だが年は篠崎が上。この人は誰からも押されて隅っこに押し詰められた。弱肉強食、実力主義。
 人から押されていい地位に就くのとは反対。
 高田は気合いが高く、いつも元気そう。そして溌剌としている。しかし、気になることがある。暗視。
 高田は夜目が効くわけではない。組織内では役に立たないだろう。停電し、照明が落ちたとき程度。しかし、昼間なら窓からの明かりで、夜目を使う必要はない。
 暗視とは高田が言っているだけの言葉で、それは暗い目。目が暗いのではない。暗い視線を感じるのだ。それが暗い目。
 発しているのは当然篠崎。高田が誰かと話しているときや、歓談しているときなど、その暗視が来る。篠崎の暗い目が突き刺さる。
 誰もが笑っているときでも、篠崎は笑っていない。無表情で、どう判断していいのか、表情からの情報はない。だから高田を見る目が厳しいとかではない。普通の目だ。
 篠崎は、また篠崎がやっていると、ちらっと見るだけで、無視しているが、一度きっちり話し合いたいと思っている。どうしてそんな目で見るのかと。
 だが、それは分かっている。羨望、嫉妬、そういう目付きだが、目に表情がないので、何とも言えない。
 隅っこ、遠いところから、まるで闇の中の野獣から見詰められているよう。
 篠崎は孤立しており、どの人脈にも入っていない。孤島だ。そのため何かあるにしても篠崎だけの動きになる。だが、高田を陥れるような動きなどは一切ない。唯々暗い目で見詰め続けられているだけ。
 そこまで来ると高田は悪意を感じる。一種の嫌がらせなのだ。だからあの目をやめさせたい。
 ある日、堪らなくなり、高田は篠崎に問い詰めた。そういった詰められることに篠崎は慣れている。いつも押されているので。押されて押されて隅っこに追い詰められているので慣れている。
「その目は何だ」
 高田はいきなり言う。
 そのあと、篠崎は長い説明を繰り返した。
 高田は納得するしかない。
「と言うことです。高田さん」
「分かった。しかし」
「はい」
「目医者に行くことだな」
「あ、はい」
 
   了
 


2021年4月6日

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