小説 川崎サイト

 

目的の果て


 目的というのは変わる。また、なかったりもする。
 目的がある方が動きやすい。設計しやすい。達成するためには何をすればいいのかが分かるので、それをすればいい。
 全ては目的のため。最終的な目的の前に、こなしていく目的がある。これはラストに繋がっているので、他のことをしているわけではない。目的の一環。
 芝垣は、その通りにやっていたのだが、途中で目的がぐらついた。まだ途中だ。最後まで行かないと途中が無駄になる。それは過程にしかすぎないので。
 最終目的は遠い。しかも以前の話で、最近、その目的に対して思いがぐらつきだした。別にもういいのではないかという弱腰。これは過程をこなしていて、その目的に達するのはかなり難しいと考えたこともあるが、今ではもうあまり魅力的だとは思えなくなったためだろうか。
 しかし、過程が無駄になる。それらの過程は最終目的を達成してこそ生きる。また、達成していかないと、最終目的へは行けない。
 芝垣は緩んだ。
 過程は無駄になるが、別の目的に乗り換えたい。またはそれに近いものでもいいのではないかと。それなら過程は無駄にならない。
 そして、過程とはいえ、達成感があった。だから、無駄ではなかった。
 しかし、今では最終目的など遙か彼方で、最初、想定していたほど簡単ではない。むしろ難しい。芝垣は自分の力と照らし合わせたとき、これは無駄なことをしているのではないかと思うようになっている。ぐらついている。ゆるくなってしまった。
「それは困ったことだね」
「はい、どうすればいいのでしょう。僕は果たせない目的を懐いていたようなのです」
「あ、そう」
「何とかお知恵を、そうでないと軸がなくなります。芯がなくなります」
「不可能かね」
「はい、おそらく最終目的には至らないと思います」
「で、どうしたいんだ」
「グラグラを鎮めたいのです」
「あ、そう」
「何か方法はありませんか。他のものに乗り換えるとか、または目的など持たないでやっていくとか」
「そうだね。じゃ、目的じゃなく、目標でいいんじゃないか」
「目標」
「達成しなくてもいいんだ。ただの標的」
「それは何でしょう」
「目標だから、方向だけは分かる。だからぐらつかないし、迷わない。目標だからね。いい目印だ。それに向かっているだけでもいいんじゃないか」
「じゃ、今まで通りでいいんですね」
「目標を掲げる。それだけで十分」
 芝垣はそんな簡単なことでいいのだろうかと思ったが、軸がぶれてぐらぐらし、落ち着かないよりはましだと受け取った。
 
   了


2021年4月15日

小説 川崎サイト