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何気なくさっと
何気なくさっとしたときの方がすんなりいく場合がある。
しかし、気の重くなるようなことは何気なくできない。「何の気もなく」の状態になるにはあまりにも気になっているので、さっとできない。気にならないことなら、すんなりといく。いつも買っているようなものを買うときのように。
衝動買いなどは、何気なく買ってしまえそうだが、これは気にする時間が短すぎて、気になるかならないのかが曖昧。深く考えなくてもいけないことかどうかを経ないで、さっとやってしまう。
頭にブレーキとなるものが浮かぶ前にやるのがコツだろう。これをすればどうなるか、などだ。
これは先のことを考えないで、ということに近いが。実行も早く、最短。迷っている間がない。
吉岡は最近、その方法でうまくいっていた。つまり、さっとやってしまう方法。これはリスクもあるがグズグズ考える時間を作らなくてもいい。そのグズグズが楽しいのなら別だが。
特に嫌なことは、さっさと済ませたい。「嫌」の中味、それを想像すると、そこに入り込みたくない。想像しすぎ、取り越し苦労の場合もあるが、百パーセント問題なし、というわけではない。リアルは何が起こるか分からない。
心配するのはフォローが完璧ではないため。穴が何カ所か空いている。
吉岡の方法は当たって砕けろ式だが、砕けたのでは何ともならない。これは余程追い詰められたときか、もう前に出るしか手がないときだろう。
殆どのプレッシャーはすっとやってしまえばほぼ何事もなく通過できることを吉岡は知っているのだが、プレッシャーがかかることが問題で、やはりトラップがあるためだろう。そこを心配する。
まあ、そのときはそのときで、アジの開きのように開き直ることにした。
イワシの目よりもアジの目の方がまだ生き生きとしている。
世の中の事象、様々な動き、それに対して何らかの言葉が残っている。普段よく聞く言葉であり、また何処かで聞いたようなフレーズ。
吉岡は先日、懸案をさっと済ませた。これはタイミングがよかったのだろう。今ならさっとやってしまえると思えたのだ。
それは高くて買えないものが特価で安くなり、そのタイミングを外すと、もうその値には落ちないとなると、グズグズしている暇がないので、さっと買ってしまうようなもの。
単純な買い物なら、それで済むが、事柄に関してはもっと複雑。その後の影響もある。
だが、すっと買ってしまえたことの快感が、今も吉岡の中にある。ただし、そのままでは駄目で、先ほどの値の下がった品のように、いいタイミングが必要。時は今、が必要。
吉岡は、その後も何気なくさっとやってしまうタイミングを狙っていたが、そう度々あるわけではない。
タイミングは外の動きだけではなく、内側での動きもある。
考えれば考えるほど色々と予測できることが次々と連なる。非常に重い鎖になり、それでは動けない。
吉岡はこれもごくありふれたことを知っただけのことだが、タイミング狙いに心がけるようにしている。
了
2021年4月17日