「ずっと同じ状態では飽きませんか？」
「飽きません」
「どうして？」
「同じじゃないからですよ」
「まあ、季節は変わるし、いろいろなことも起こりますしねえ」
「そうでしょ」
「しかしそれを自発的に変えようとは思いませんか？」
「何を？」
「ですから、そのワンパターンをですよ」
「誰が？」
「あなたがですよ」
「え、わしがですか」
「いつも同じじゃないですか」
「それはわしの安定感でしょ」
「安定しているとは思えませんが」
「不安定ながら、安定しておるのです」
「やはり、不安定を認めるのですね」
「このバランスを崩すと、本当に不安定になるんだよ」
「不安定なら、もう崩れているのと同じでしょ」
「うまく引っ掛かっておるのですよ。ここで下手に身動きすると危険な状態になる」
「だから、動けないのですね」
「そうです。ここで安定しております」
「あなたが安定しているのはよく分かりました」
「いや、安定なんてしていないんですよ」
「じゃあ、安定していないのですか」
「しておりません」
「じゃあ、行動すべきではないですか？」
「行動は毎日しておりますが」
「不安定から安定へ向かう行動ですよ」
「安定しています」
「さっき、不安定だと言われたじゃないですか」
「だから、動かなければ安定しているんですよ」
「つまり、はまり込んで出てこられないわけですね」
「どこに？」
「穴のようなものの中にです」
「穴ならはい上がりますよ」
「それですよ。それが行動なのです」
「出ようとすると不安定になります」
「あなたは進化しないようですね」
「わし一代では進化などしないでしょ」
「あなたは何を拒絶しているのですか？」
「あんたをだ」
「私？」
「あんたの言い草が気に入らないからですよ。まるでわしが間違っているように決てかかっとる。それが気にいらん」
「分かりました。私の得意な話に持ち込めなかったのは残念です。あなたも聞けなかったことで残念なはずです」
「まだ決めつけるか！」
　
　　　了
　
　
　


　　　　　　　　　　2007年9月17日