小説 川崎サイト

 

大漁


 三村は朝から調子がいい。体調は悪いが、気分がいい。ただ体調の悪さがあるので、差し引きすれば、それほどでもないが、元気はある。
 それは一寸した取引が続けて成立したため。大漁だともいえる。そんなことは滅多にないので、喜ばしいこと。
 いつもは坊主が多い。何も釣れない。たまにかかる程度だが、今朝はビクに勝手に入り込んだように、魚が入っていた。当然、本物の魚ではない。
 特に仕掛けはないが、小まめにチェックすることが仕掛け。そのチェックの仕方の仕掛けがあり、その網で、引っかける。決して罠ではない。
 それで、今朝は一週間分ほどの獲物をゲットしたので、気分がいい。
 三村は待機タイプ。待ち伏せタイプ。決して積極的に出ていくタイプではない。そちらの方が早いのだが、リスクも大きい。つまり狩りは苦手なようだ。
 待てば何とかなるようで、これはタイミングものだが、自分のタイミングではなく、相手のタイミングに左右される。だから相手次第。相手の出方次第。
 それで、今朝は満足を得たので、いい気分だが、そのあとは坊主が続くだろう。大漁の日など続かないどころか珍しい。
 だから喜んでいるのは、今だけで、明日からは違う。
 しかし、まだ午後がある。まだまだ釣れるかもしれないが、既に釣り上げたあとなので、もういないかもしれない。
 待機タイプ。これでいいのかと、三村はいつも思っているのだが、何度も方針を変え、打って出るタイプをやったこともあるが、あまり成果はない。狩りが下手なのだ。
 こういうのは経験から出てくるようで、結果を見て方針を変える。だから、今のところ待機型の方が成果が出るので、それを続けているだけ。
 待てば得られる。または待った方が簡単に得られる。それは分かっているのだが、すぐには得られない。かなり経過しないと。その頃にはもう値打ちがなかったりする。
 三村にもタイミングがあるのだ。価値もタイミングで決まる。その時期だからこそいいとか。またその旬を過ぎれば、魅力はなくなるとか。
 いずれにしても、それらのことは趣味の話なので、収入にはならないが、実益はある。
 その翌日からは、坊主の日が続き、釣れても雑魚ばかりだった。
 そんなものだろう。
 
   了

  


2021年6月20日

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