「ほほう、そんな感じかね」
「感じだけでは分かりにくいと思いますが」
「大体の感じは分かったから、それでいい」
「感じって、主観の問題なんですよね」
「えっ」
「あ、失礼」
「主観?」
「部長が感じ取ったものと、一般とは違うかもしれないのですね」
「私が勘違いをしているとでも」
「主観ってもともと勘違いなんですよね」
「何だ、君は」
「部下ですよ」
「それは、わかっとる」
「これが主観ではない事例ですよね」
「そんなことを聞いていない。何でそんな言い方をする」
「遠回しな言い方になりました」
「近道で頼むよ」
「よろしいですか?」
「えっ、何が」
「主観の話です」
「それは終わったじゃないか」
「先程部長が感じ取られたことは、正しく感じ取れていないようなので」
「よく分からん。何の話だ?」
「ですから、先程僕がお話ししたことです」
「だから、その報告は、何となく分かったと言っただろ」
「分かっておられないと思いますね」
「失礼な」
「部下として心配なのです」
「じゃあ、ちゃんと説明しなさい。君の報告がまずいのじゃないのか」
「事実をきっちりお話しました」
「じゃあ、問題はないじゃないか」
「驚かれないのですかね?」
「別に」
「驚くべき事実ですよ」
「よくある話じゃないか」
「それで済まされるのですかね」
「君」
「はい」
「上司に、ねえ、ねえ、とは言わんほうがいいぞ」
「すみません。癖です」
「報告は聞いた。感じも分かった。これで終わりだ」
「部長は僕の報告を無視するのですか?」
「ちゃんと聞いたじゃないか。君の仕事はそこまでだ」
「では、ちゃんと受け止めてくださいよね」
「また、ね、か」
「あ、失礼しました」
「どんな感じかは分かったから、ここは触らないで静観しよう。どうだ、これでいいか」
「はい、何となく感じが分かりました」
了
2007年9月21日
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