 |
 |
何ともならない
「暑いので、何ともなりません」
「私は寒くても何ともならん」
「寒いのに弱いのですか」
「いや、季節に関係なく、年中何ともならん」
「それは安定していて、いいですねえ。私なんて、ムラがある。春の終わり頃から秋の初めの頃まで何ともなりません」
「それは長いですね」
「しかし秋の半ばから、春の中頃までは調子が良いのです」
「年の半分はいけないと」
「はい、いけません。特に真夏は絶不調です。何をするにも何ともなりません。頭も回りませんし、根気も続きません」
「それはひどい。私など年中不調なので、一年中大丈夫です。いや、決して大丈夫なわけじゃないですよ。何ともならないので、弱々しいです」
「体調の方は如何ですか」
「あまり変わりません。仕事の調子が悪いだけで、これだけは何ともなりません。まあ、調子が良いと、逆に疲れますから、何ともならない方を選んでいるのかもしれませんがね。だから何とかしたいとは思わなくなりました」
「凄い境地ですねえ」
「ただの怠け者ですよ」
「私は怠けたくないのですが、こう暑いと、何ともなりません。決して言い訳じゃないですよ」
「じゃ、気温が高い目の半年は休み、涼しくなってからの半年間に頑張ればいいのではありませんか。寒さはどうなのです。大丈夫なのですか」
「はい、寒さは平気です」
「夏場だけ働き、あとは寝て暮らしている人もいますよ」
「じゃ、私は冬場だけ働き、あとは寝て暮らす方向を目指します。暑いのに、無理して頑張っても仕方がないですからね」
「そうしなさい」
「それよりもあなた、年中何ともならないのに、よくやってますねえ」
「やるだけはやってます。何ともならなくても、何かやってないと、間が持ちませんからね」
「しかし、何ともならないのに、やっていける。それって、凄いことじゃないのですか」
「そうですねえ。何ともなりませんから、成果もありません」
「でも食べていける」
「食べないと死にますからね」
「一体どんなお仕事なのですか」
「仕事と言えるほどのものじゃありません」
「はあ」
「まあ、その話はそれぐらいにして、今日はこれで、お開きということで」
「はい、有り難うございました。気晴らしになりました」
「戻ってから、また続けられるわけですか」
「暑いので、何ともなりませんが、まあ、やるでしょう」
「休まないで？」
「はい、やはり半年休むというのは、私には無理です。暑くても頑張ります。休むと元に戻すのが大変ですから」
「はい、お大事に」
「あなたも」
「あ、はい」
了
2021年7月27日