小説 川崎サイト

 

暑苦しい動き


 暑いとき、じっと座っているとますます暑くなる。座っているだけでも暑い。その状態でやっていることは、暑い暑いと言っているだけの感じだが、そう始終思い続けられるるはずがない。暑い暑いにもネタが切れる。
 それで佐久間は動くことにした。部屋の片付けを本気でするわけではないが、ここにあってはいけなものを持ち、本来あるべきところに戻すとか、その程度。これはトイレに立つとき、ついでにやっているのだが、それを増やした。
 座っているだけでも暑いのに、動くと更に暑くなると思っていたが、そうでもない。べたりと尻をくっつけたり、背もたれに背中をくっつけていたことから解放されるので、それだけでもましになる。
 また、動くと自転車のように風を受けて、ということはないが、多少はある。動くと、空気が変わるし、流れる。その空気は同じ温度だったりしても、佐久間の周りにまとわりついていた空気は生温かいが、別の空気の中に入り込むと、少しはまし。
 夏に行動的になる。これは暑いから。じっとしているよりも、少しは動いた方が、まし。
 確かに冬よりも動きがいい。冬は固まっている。夏は溶け出すわけではないが、身軽。これは着ているものが違うためだろう。
 だから、佐久間は夏はぐったりとしているのではなく、結構動いている。冬よりも。
 また気候のいい過ごしやすいときよりも、夏の方がアクティブ。
 動くと暑いはずなのだが、じっとしているよりもまし。それに気付いた。
 それで、佐久間は用事を増やしたが、水回りのことが多い。水を触っていると、いい感じのためだろう。
 苦しいのは押し入れの中とか、狭苦しい場所。流石にそこに頭を突っ込むだけで、汗が出る。これはできるだけ避けている。
 目的は片付けだが、じっとしていると暑いので、それがましになれば、それでいい。
 また、外にも出ることにした。日に何度も散歩に出たり、買い物に出たりした。炎天下の移動。意外と部屋でじっといているより、まし。
 本当にましなのかどうかは分からないが、暑さ以外のことに目が行くのは確か。しかし、部屋にいるよりも実際は暑いだろう。炎天下なので。
 しかし、日陰に入ると、ほっとする。これが非常にいい。それで外の方が涼しいと思うようになれる。炎天下でじっとしておれば、これは確実に暑いだろう。
 その他、色々な用件を佐久間は果たしている。暇なときにやろうとしていたことや、その気になったときにすればいいとやり残していたことに積極的に挑んだ。
 部屋で、じっとしているだけまし。全てがそこにある。
 佐久間のこの暑苦しい動き、本人は結構気に入っている。
 
   了




2021年7月30日

小説 川崎サイト