小説 川崎サイト

 

夜勤


 真夏の真夜中、ふっと目を覚ましたとき、何か違和感がある。それまで別世界にいた。夢の中だ。
 しかし、中味は覚えていないが、静かな雰囲気が漂う夢だったこと程度は覚えている。そこから、すっと現実に戻ったのだが、この現実にも違和感がある。目覚めたばかりのためだろう。それに起きる予定はないし、目を開ける予定もない。まだ、朝ではないためだ。
 本来なら夢の中。自分がどこかへ行っているが、夢の中にも自分がいる。その自分にも意志がある。夢の中とはいえ、何らかの選択肢があるとき、選ぼうとする。物語をただ見ているだけではなく。
 それも含めての物語なのかもしれないが。
 白河はまたここにいるかと、先ずそれを思った。寝入ったときは思い出せない。いつ眠ってしまったのだろう。暑くて、寝付けなかったのだが、結局は落ちたようだ。それがどのタイミングだったのかは記憶にない。ただ、ウトウトし始めたのは知っている。そのうち落ちるだろうと。だから、そのあとすぐに落ちたはず。
 意識は途絶えていたとはいえ、それが真夏の夜であることはすぐに分かった。起きたとき、いちいち季節など確認しない。夏なら、夏に決まっている。起きると同時にカレンダーもセットされるわけではない。身体が覚えているのだろう。
 部屋はまだ暗い。寝るとき、電気を消したときと同じ暗さ。しかし、そのときよりも、よく見える。
 白河が夜中に起きるとすれば、トイレ。または冷房が効きすぎて、寒くなったとか。しかし、その両方ではない。これが先ず違和感の始まり。
 誰かに起こされたのではないか。
 秘密があるとすれば、それは先ほどまで見ていた夢。すっかりと忘れたが、その夢で起こされたのかもしれない。
 そして夢の内容は忘れているが、雰囲気だけは覚えている。物悲しいような。
 だがそれもおぼろげで、はっきりとしたものではい。忘れた夢を再現できればいいのだが、これはタイムマシーンでも無理かもしれない。
 謎の夢。それは秘密めいている。これはきっと思い出してはいけない夢なのかもしれない。触れてはならない内容なのだ。
 それが何であるのかは分からないが、夢の中で、何らかの始末をしたのではないか。決着を付けたのではないか。過去の何かのわだかまりのようなものを整理するように。
 そのショックで、目が覚めた。と、白河は思ったのだが、内容は分からない。
 そのあと、白河は寝た。夜中、そんな感じで、起きたことは、朝になっても覚えていた。
 しかし、大したことではないと思い、気にもしなかった。
 白河の意志とは関係なく、眠っているとき、別部隊が、何かをやっているのだろう。
 ご苦労なことだ。
 
   了

 
 


2021年8月8日

小説 川崎サイト