小説 川崎サイト

 

神仏の話


「神や仏はいるでしょうか」
「いるでしょ、そのへんにゴロゴロしている」
「そんな聖地があるのですか」
「いや、普通の市街地だよ。お寺にゃ、仏がいる。教会には、そっちの神様がいるだろ。普通にいるじゃないか」
「そうですね」
「分かりきったことだ」
「あのう」
「何か」
「そういうものじゃなく、神仏はいるのでしょうか。存在するのでしょうか」
「それはさっきいったでしょ。お寺の多い場所なら、仏さんだらけだ」
「でも、それはただの彫刻とか、鋳物でしょ。それは仏像で、問題は中味なのです。中は木でしょ。または空洞だったりして」
「本当の仏さんが、その中に」
「入っているのですか」
「これは象徴なんだ」
「はあ」
「それ以上は野暮ってもんだ」
「仏像は多く見ましたが、ああ言うのを着ているのですね。あんな着物ができる前にはいなかったのですか。あれは布でしょ。織物でしょ。そういうのがまだなかった時代の仏さんなら毛皮だったりしそうですし、また、何も着ていなかったりするかも。そちらの方がリアルです」
「しかし、素っ裸の仏さんではねえ。それじゃ、男女が分かってしまう。男か女か」
「神様はどうですか」
「もっと多い。それこそ何処にでもいる。だから、神さんなんて珍しくも何でもない」
「それは多神教ですね」
「難しいことを」
「私達人間は、神の子、仏の子だと聞きました」
「人間だけがそう思っておるのでしょ。猫や犬にはそんなものは入れて貰えないが、猫神や犬神がいるかもしれん。犬の先祖だったり猫の先祖だったりね」
「それは遺伝子レベルですね」
「また、難しいことを」
「それで、君は神仏を探しているのかね」
「神秘的なので」
「好奇心か、興味本位か」
「あ、はい」
「信仰心はないのだな」
「何か信仰したいのですが、今一つ、スペックが」
「何がスペックだ」
「はい」
「じゃ、神仏とは逢えんなあ」
「あなたは信仰心はあるのですか」
「あるかなあ」
「何でしょう。教えて下さい」
「全部だ」
「ああ、それはお得ですねえ」
「まあな」
 
   了


 


2021年10月14日

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