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決め事
植田はやっと決まったので、ほっとした。これまでいろいろと考え続けていたのだ。これで方針が固まり、やることができた。何をすればいいのかが明解になった。
そのとたん、一息ついたためではないが、何もしなくなった。決まったからそれで済んだようなもの。しかし、決めるだけなら誰にでもできる。だが、植田はなかなか決まらなかったのである。決めるだけでも一生かかるほど。残りの余生では実行できなかったりする。
しかし、植田は十分に時間はある。だが、この決め事をするだけでも一仕事。大きな仕事をやり遂げたようなもの。それで、満足を得た。もう満腹で、動けない。
だが、その後の日常は安定したものとなる。仕事もやっているし、遊びもやっているが、そこに決め事の結果が出るのだろうか。思い悩むことが消えたので、安心して日々を過ごせる。
その日々も山あり谷ありだが、よくあるようなことで、難解さはない。
それで、しばらくは平穏な日々だったが、例の決め事をやはりやるべきだろうかと思うようになる。決めただけで実行していない。
それで、恐る恐るやってみたのだが、跳ね返される。抵抗がある。これは植田自身に来る。こんなにきついものなのかと改めて思うほど。
しかし、折角決めた決め事なので、やらないと意味がない。しかし、やると苦痛。しんどい。不快。もの凄い嫌ごとになる。
植田は自分で決めたのだが、よくもまあこんなしんどいものに決めたものだと後悔したが、やらなければいいのだ。
やることは決まっている。だから安定している。しかしやると不安定になる。よって、やらない方がいい。
おそらく植田は間違った選択をしたのだろう。しかし、その問題は決着を付けたはず。だからこそ長い間考えていたのだ。非常に慎重に、そして丁寧に。その答え、判断に間違いはない。しかし、実行できない。すると、間違っていることになる。
そうなると、また決め直さないといけない。こちらはこちらでしんどいことになる。
それで、良かったことを考えた。実行まではしていないが、決まったあとはいい感じだった。それを実行する前まで。
だから、決め事はそのままにしておいて、実行しなければいいのだ。
世の中には実行してはいけないこともあるのだろう。
了
2021年10月21日