小説 川崎サイト

 

波風が立つ


 それまで、何となくいつものように暮らしていたとき、一寸した波風が立つことがある。それが気掛かりになり、いつものペースで日々が送れなくなる。日々は同じ、やっていることも同じだが、気持ちが違う。
 そういうとき、いつもの気分に戻りたいと願ったりするが、そのいつもの気分がそれほどいいものではない日もある。
 しかし、日々の平穏を乱す厄介事とか、面倒事は質が違う。これもまた、いつものペースの波に吸収され、小さくなるかもしれないが、少し時間がかかる。
 それに解決しないままだと、気掛かりとしてずっと残る。ただ、もう忘れてしまうほど意識に上らなくなることもあるが。
 災難ごとと楽しいことが同時に訪れることがある。楽しいことを計画したとき、悪いことも動き出すのだろうか。ただ、因果関係はない。しかし、自分の中では繋がっているのかもしれない。
 面倒事が起きると、早くそれが去って欲しいと願う。そしていつもの日々に戻りたいと。これは日々の中味ではなく、気分の問題だろう。
 いつもの調子、それはその日により、良い調子もあれば悪い調子もある。決して平穏ではないが、大きな波ではない。こなせる波。乗り越えられる波で、よくある波。
 島田は、いつもとは違う波を受けた。その影響がしばらく続くらしい。その日から、別の気分が左右する世界に入るようなもの。
 これは何とかしないと落ち着かない。日々がそれで濁ってしまい、ペースまで違ってくる。一番大きいのは気分だろう。
 しかし、数日後、よく考えると、退屈ではない日々ということになる。やることができたようなもの。あまりやりたくないが、そんな波を受けなければ、やろうという気は起こらないはず。いい機会だと解釈することにした。
 要するに嫌な気分だったが、その気分を少し切り替えればいい。
 しかし、ある程度おさまるまで、楽しいことがあっても手放しでは喜べないだろう。これが少しもったいない気がする。
 楽しいことをするには、その気分になっていないと、効果がない。
 どちらにしても、いつものペースというのがあり、それに戻そうとする力が働くようだ。
 
   了

 

 


2021年11月5日

小説 川崎サイト