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紅葉シーズン
「晩秋で黄昏時、これは重なりますなあ」
「私も年ですので、さらに重なります」
「秋は嫌ですなあ、これがあるので」
「冬ならいいのですか？」
「そうですねえ。永眠でも冬眠でもありませんが、まあ、普通ですよ」
「ああ、普通」
「特に何も感じませんなあ。寒い程度です。これは着込んだり、暖房で何とかなりますが、吹きさらしの屋外はやはり寒いことは寒い。しかし、寒いだけですからね。分かりやすい」
「身も凍る思いというのもありますが」
「凍る前に何とかするでしょ。凍死ですよ。それまでに何とかするでしょ」
「そうですねえ。でも冷たい物にいきなり襲われたりするかもしれませんよ」
「誰だ」
「特にいませんがね。今は目に見えない冷たい物が多くなったのかもしれません。分かりにくく」
「冷気、寒気の妖怪かもしれませんぞ」
「そういうたとえが寒い感じがします」
「いえいえ、そういう妖怪がいるのです」
「はいはい」
「ところで、紅葉シーズンですが、何処か、行きませんか。紅葉狩りに」
「毎年、そんなことを言ってますねえ。私はいつも断っているのに」
「一応、誘います」
「で、去年はどちらへ行ったのでした」
「行ってません」
「行ってないと」
「気乗りがしなかったので、辞めました。まあ、あなたが一緒なら、行きますがね。私一人だけの目的なので、気が乗らなければ辞めても問題はありませんから」
「じゃ、去年は紅葉狩りは、なし」
「いえ、町内の公園で済ませました。しかし、それは本意ではなかったのですがね。やはり名所へ行かないと、雰囲気が出ませんから」
「私は最初から行く気はありません。何かのついでで出掛けたとき、偶然見かけたときは見ますがね。その程度です」
「何を見るのですか」
「だから、紅葉ですよ」
「ああ、そうでしたね。その話でしたねえ」
「あなたが言い出したんじゃないですか」
「ああ、別のことを思っていました」
「ほほう、どんなことを」
「高峯寺のモミジが穴だと聞いたのを思い出しました。山の中腹にありましてね。モミジの名所です。そうか、あそこがあったのか、あそこなら行ってみたいと、思い出したわけです」
「じゃ、行けば」
「そうですね」
「私は行きませんよ」
「はいはい、先ほど誘ったので、二度目になるので、もう誘いませんよ」
「じゃ、決まりだ。行ってらっしゃい」
「その気でいるうちに、出掛けます」
「いつまで続きますかな、その気は」
「三日ほど。それまでに出掛けないと、気分が散ります」
「ああ、なるほど」
了
2021年11月9日