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ご機嫌よう
「今日は立冬にしては穏やかですねえ。気温、高い目じゃないですか」
「そうですね。でも風があります。晴れていますが、雲が多い。流れているんでしょうねえ。この風が曲者ですよ」
「でも、今はいい感じです。小春日和」
「そういうのは長く続きませんが」
「どちらにしても立冬らしくないですねえ。冬の初めの感じは微塵もない。少し前の頃の方が寒かったですよ」
「まあ、暦の上での話なので、そんなものでしょ。立春の日から暖かくなり、春が始まるわけじゃないでしょ。その頃、真冬だったりします」
「しかし、いい天気なので、気持ちがいいです」
「私は、内面の天気がここんところ悪い」
「それはいけない」
「まあ、そのうち晴れるでしょうが、それまでが鬱陶しい」
「まあ、空の天気と同じで、そのうち変わりますよ」
「そう願いたい」
「いつまでも同じ状態じゃないですからね。天気がそうですよ。そして世の中も、当然あなたも」
「一年前の今頃、何をしていたのかと思い出すのですが、呑気でしたよ」
「でも過去、ずっといい感じじゃなかったでしょ。今よりも曇っていた頃もあったはず」
「そうですね。まあ、忘れましたが」
「あの頃まではよかったというのは確かにあります。また、戻るでしょう」
「はい、有り難うございます」
「人生、山あり谷あり、ありふれた言い方ですがね」
「そうですねえ。決して平坦じゃなかった」
「何があったかは知りませんが、なるようになるものですよ。時間がかかったりすることもありますが、気の重い状態にも飽きが来ますよ」
「いや、大したことじゃないのですが、最近曇り日ばかりで、滅多に晴れないので、このまま曇り日のままじゃないかと考えてしまいます」
「それは曇り日に考えるからですよ」
「そうですねえ」
「それで、一体何があったのですか」
「それは言いたくありません。何だそんなことか、と思われてしまいますから」
「ああ、なるほど。じゃ、そんなに凄い話ではないのですね」
「はい、早く、今日のような小春日和のいい天気の時、素直にそう感じれるまで、待つことにします」
「気分もいずれは変わります。御達者で」
「はい、ご機嫌よう」
了
2021年11月10日