小説 川崎サイト

 

機械仕掛けの吉田


 吉田は決まり事を機械のように、連日続けている。まるでロボットのようだが、中味は生身の肉。機械のようにはいかない。
 しかし、その動きは機械のようで、その流れから出る事はないし、また同じ流れを維持しようと思っている。
 機械なのに、思う。中の人が人間なので、思ったり考えたりはする。違うことがしたいとかは当然ある。
 しかし、機械的にやるのも実は大変で、その動き方を維持するだけで、一杯一杯。下手をすると、ミスをし、機械的な正確さがなくなる。
 実は機械的な動きというのは難しく、大変なのだ。昨日と同じようにはできなかったり、遅れたりもする。同じ動き方を維持する。これはかなり知恵がいるし、創意工夫もいる。
 また、機械は融通が利かないときがあるので、その修正も必要。ここは機械ではできないので、吉田が出しゃばるいい機会だ。
 修正したり、修善したりすれば、いつもの動きに戻れる。
 また、機械を機械で直すというのもある。これができれば一番楽だ。一番いいのは自動修正してくれること。それならメンテナンスはいらない。だが、機械を直す機械も故障することがある。そんなときは、さらにそれを直す機械を使うのだが、吉田の中にはない機械なので何ともならないが。
 全て機械的に動く。実は至難の業で、何処かで吉田が生身の頭で考えて、手直しすることになる。そんな頭など使いたくないのだが、仕方がない。
 機械的に動いているときは、何も考えなくてもいい。そのため、別のことを思い出したりする。さらに色々な想像をしたりとか、そちらが楽しい。
 色々なことを思い付いても、それを実行するわけではないのは雑念に近いため。想像を楽しむ程度。
 そのためには、いつものことを機械的にやらないと、そんな余裕は出てこない。
 余裕のある時はいいが、機械的動きになかなか乗れないときが始終あり、そちらの調整で忙しい。
 まだまだ機械的な動きに達せない。ほど遠い。ここを詰めたないといけないのだが、永遠に辿り着けないだろう。
 吉田が日々機械的なロボットのような動き方をしているが、意外と飽きない。まだまだ調整が必要なほど、機械になりきれないのだろう。
 
   了


2021年11月22日

 

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