小説 川崎サイト

 

ひでお伝説


 昨日は大活躍し、勇者であり、英雄だったので、今日は休もうかと思った。二日も、そして二度も三度も勇者ができるわけがない。
 それに、そればかりでは疲れる。テンションも上がりすぎ、また体力の限界値も上限。あとが疲れる。気も高まったまま、なかなか鎮まらない。寝るのも遅くなる。
 だから勇者はたまでいい。勇者働き、英雄働きをする前はプレッシャーが掛かる。それがあるので本村はできるだけうまくやり終えることを予定しないで臨むようにしている。
 予定にはないが、予想にはある。うまくいけば、大手柄。その可能性はあるものの、それを考えると、武者震いする。この震えが良くない。
 昨日の勇者働きは偶然だった。再現できるものではないので同じような条件でも繰り返せない。少し違うためだ。一つ違えば昨日のような偶然もやってこない。
 しかし、勇者になると、周囲の目付きも変わる。殆どは妬みとかの所謂嫉妬。あの本村が、となる。つまり、本村ごときがそんな大手柄を、となる。
 そのため、勇者になると、後遺症や副作用が来る。こちらの方が怖かったりする。そして勇者になった気持ちよさは一瞬だけ。あとが大変。
 だから、偶然、たまたまだったと周囲には言っている。実際、そうなのだから、そのままだ。
 それで今日は手を抜くことにした。力まないで適当にこなす程度。二日続けての勇者では周囲が承知しない。褒め称えてくれるが、腹の中は別。
 本村は勇者になれても、蔑まされている。その実力がないためだ。だから、運、偶然だが、それが結構強い。それで、たまに勇者になれる。
 この強運を嫉まれるのだ。
 また、本村には勇者、英雄としての風格がなく、また、その人格というか、それも含めた器ではない。
 それで、今日は地味なことをしていたのだが、勇者働きが可能な隙間を見付けた。
 いけるかもしれないというタイミング。だが、自制した。二日続くとまずい。だが、今回は運ではない。見えているのだ。この条件ならいける。
 やはり勇者欲が本村にもあるのだろう。それに誘われ、方針を変え、突っ込んだ。
 しかし、途中で様子が変わり、うまくいかないことが分かったので、そこでやめた。同時にほっとした。手柄を立てずに済んだので。
 そういう英雄もいるのだろう。ちなみに本村のフルネームは本村英雄。
 既に英雄なのだ。ひでおだが。
 
   了

 

 

 


2022年1月19日

 

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