小説 川崎サイト

 

歯がゆい思い


 先に未来があるのか、先に過去があるのか、どちらだろう。
 高峯は暇なのでそんなことを考えていた。何の役にも立たないこと。それを考える意味は暇を潰すこと。
 少し先、未来という規模ではないが、やることがない。次にやることは夕食。それまでの過ごし方が未来にある。すぐ先のことだ。
 考えている間に過ぎるほど短くはないが、ぼんやりしていると、その時間になるかもしれない。
 次は夕食後、何をするかだ。それも未来。先に未来があるのか、先に過去があるのかと、思案中。
 この先、暇なので、それを埋める何かが欲しい。それで、考えているだけではなく、実行しないと、ずっと考え続けると飽きるだろう。だからやはり、何か有為なことがしたい。
 ゴミの日に出せない金属棒がある。細いパイプだが、長すぎる。半分の長さだと出せる。それだろう。それを切る作業。これは有意義。
 そのことは以前から考えていた。それで金ノコを買っている。安い品だ。糸鋸のようなものもあるが、殆どヤスリに近いだろう。
 そのとき、金属も切れるが、プラスチックも切れるタイプを探していた。プラスチックの大きな容器があり、これも大きすぎてゴミの日に出せない。
 容量オーバーだ。大きい目のゴミ袋の中に入る程度でないと駄目。何リットルの袋かは分かっている。
 このプラ容器の大きなもの、切ればゴミの日に出せる。これは未来のことを考えていたのだろう。昔の今なので、もう過去だが、
 だが、今は未来だけで決まるものではないが、過去の押し出しで未来が分かってきたりする。過去を含んだ今。そして、今は未来に引っ張られているとか。
 そういうことを高峯は考えているのだが、話はそこで終わる。その先、それがどうなるのかが見えなくなったため。だから、どうすればいいのかも。
 この暇潰しは短かった。だから別のことをしないといけない。これは適当でいいだろう。ここは過去からの押し出しが効くかもしれない。いつもやっているようなことをしながら夕食まで過ごす。
 過去の繰り返し。それでもいいが、これが未来にどう影響するのかを考えると、もう少しましなことをやる方がいい。先ほどの金属切りノコギリで作業するとかだ。
 この場合、それを成し遂げれば、未来はどうなる。邪魔な金属の棒、これを見なくてすむようになる。それで、スッキリする。プラ容器の大きなものも。
 これは未来からの引っ張りだろうか。
 だが、それは誰でもやっていることなので、特に言う必要もないし、考える必要もなかったような話。さっさとやれば良いのだ。
 今が未来を変えるのか、未来が今を変えるのか。そして過去はどうなっているのか。
 全部同時に来ているような気がしたが、そんなことが分かっても、何ともならない。
 しかし、買ったまま放置していた金属切りのノコギリを試してみたいと思い、それを試すことにした。別に過去からの押し出しや未来からの引っ張りではなく、退屈なので、刺激が欲しかったのだろう。
 しかし、そんなノコギリでは金属は切れず。歯が立たない。従って歯がゆい思いをした。
 
   了

   


 


2022年2月23日

 

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