小説 川崎サイト

 

さて、どうするか


 さて、何をしようかと田中は考えた。何か何処かでやる気の芽が吹き出しているのだろう。春めいてきたためかもしれないが、そういうやる気を起こすのは、新たな展開が欲しいため。
 田中はその時間、決まってすることがある。一寸した整理やチェック。これは管理物で、既に終わったことや、新しいものがないかどうかのチェック。しかし、毎日似たようなものばかりで、目新しいものは滅多にない。
 だが、たまにある。そのため、チェックを忘れない。見逃すと、あとで探すのが大変なため。
 その時間帯になっているのだが、そういうことではなく、別のことがやりたくなった。今までやっていることでもいいが刷新、新たなやり方などが見付かれば、同じことをやっていても、少しは新鮮。
 しかし、田中がその時間帯にやっていることは、別にしなくてもいいようなこと。そのため、半ば楽しみとしてやっている。
 誰かに命じられたわけではないし、やらないといけないことでもない。困ることでもない。むしろそんなことで時間を取る方が困るのだが、楽しみにしている時間帯なので、それは外せない。他にいいものがあるのなら、別だが、当分はない。
 いつからそれに関することをやっていたのかと田中は考えたのだが、若い頃からだと思われる。やり方は違うが、それに属している。
 だか、らこれは綿々と続いているのだ。形は変わっても、テーマは同じ、という感じだろう。だからライフワークのようなものだが、仕事ではない。
 また、なくても暮らしや生活には困らないが、敢えてやめた場合でも、また何処かで復活している。
 非常に長く続けていることなのだが、そのやり方、方法は変わっていく。
 これは徐々に進歩し、また、より効率のいいものを見付けたりするので、そのものよりも、そのやり方にも興味深いものがある。
 そして、その日、さて、何をするか、と田中は考えた。行き詰まったわけではないが、少し飽きてきた。中味を変えるか、方法を変えるか、少し揺すぶる必要がある。
 実はこれ、本職にも応用できるので、それなりに役立っている。そこがまるで実験場のようなもので、失敗しても、被害は少ない。
 ここが実は演習場であり、そこで練習をしているわけではないが、得たことは多い。
 だからどうでもいいようなことをやっているように見えるが、そこで得たものを本職でも生かせたりするので、やる意義はある。
 そして本職が終わってしまっても、まだ、それをやり続けられるだろう。こちらの方が息が長いし、転職はないし、定年もない。
 さて、どうするか、と、まだ田中は思案中。ここでの変化が、田中の生き方さえ変えるほどの局面にもなり得る。
 そして何も思い付かなかったので、これまで通りと決定。継続だ。まだ、それほど大きな変化を求めていない時期のためだろう。
 
   了

 



2022年3月8日

 

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