小説 川崎サイト

 

風邪と物語


 風邪を引いたのか、竹中は元気がない。日々のことはできるが、体力を使うことは避けたいが、それほどでもないと思い、いつものようにこなせたのだが、やはりしんどさはある。だが果たせたので、それなりに気分はいい。だが、体には負担だったようだ。
 そのあと、横になったのだが、仮眠のつもりが、長く寝てしまった。長すぎる昼寝。これで、体力を取り返したわけではないが。
 部屋の掃除機程度なら、それほど問題はないが、庭仕事はそうはいかなかったようだ。
 夕食後、楽しみにしていることをやるのだが、それをパスした。体調の悪いときにやっても、楽しくない。いずれも肉体から来ていることで、その影響が大きい。
 しかし、肉体をそれほど使わず、刺激の少ないものなら、結構できる。肉体が精神に食い込んでこないはずなのだが、あまり冒険的なことを考えるようなことはしないようで、整理のようなことや、長い間、気にしていた事柄などを調べたりしながら、夕食後を過ごした。
 実はこれ、別に楽しい過ごし方ではないし、先へ先へと進めていくことではない。それをすると、頭だけで考えているようだが、結構、肉体も使っているのだ。ただ、激しい運動ではないが。
 だが、興奮すると、肉体を使うようで、これがしんどい。だから、刺激の少ないことばかりをやっていた。
 風邪で起きるのが辛いわけではないので、ぼんやりでもいいので、何かやっている方がいい。そしていつもの時間になれば寝ればいい。それまでの間、何かで潰せばいいのだ。
 また、風邪を引いているのだから、途中で眠くなれば、もう寝てもいい。その方がよかったりするが。
 また、食欲もそれほどないためか、食べる楽しさよりも、何か食べないと、腹がすくので、量は少ない目だが、いつも通り食べた。
 竹中は休むと、違うものが見えてきた。これは飛び出したものではなく、地に近いもの、素に近いものかもしれない。つまり竹中が本来持っている無理のないものだろうか。
 しかし、それでは刺激がないので、飛び出したもの、一寸行きすぎたものをやっていた。頑張りすぎたのだろう。
 しんどいので、頑張らなくてもできるものをやっていると、楽な気がした。結局それらは寝る前までの時間つぶし、暇潰しなのだから、実は何でも良かったのだろう。
 いつもやっていることと別のことをやっている。それでも時間が来ると、ちょうど眠くなる時間帯。
 それで目的を果たしたのだが、頑張って前に出て、何かをやろうと企んでいたときの物語は進んでいない。
 その物語を進めるには、やはり体力がいるのだろう。風邪でしんどいときは無理だ。違う物語を編んでしまうので、下手に先へ進めない方がいい。
 物語、それは語りではなく騙りだろう。うまいこと話をそっちへ持っていくようなものなので。
 
   了
 
 


2022年3月16日

 

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