小説 川崎サイト

 

期待


 田島は楽しみにしていることがある。月が変わるときに、一寸良いことがある。月末にそれが分かるときもあれば、月の初日にならないと、まだ正体が分からないのもある。
 どちらにしても月が変わると複数の良いことがあり、中にはハズレもあるが、期待できるものもある。それはその先、いい展開になる可能性があるため、楽しみだ。
 逆に期待していたのに、現状維持か、それ以下で、これはもう期待できないかもしれないと思うことがある。もう楽しみにはできないことになる。
 また、新たなものが登場する。これも月の初めに分かる。その月の中でお目にかかれるだろう。さらに予告なく、予定もされていなかったものが、突然現れることもある。この場合も、その月になってみないと分からないので、そういった飛び込みも楽しみだ。
 それで今月だが、期待できるものはなかった。全体に低調で、これというのがない。これは月の半ばあたりでの話で、今月はこれで終わりだろう。
 すると来月に期待が行く。まだ半月ほどあるので、何が登場してくるのかは分からない。
 しかし、早く月末になって欲しいところ。そうすると、なかなか半月は経過しない。
 それで、忘れていた頃に、月末になる。期待していることは忘れていた方が早かったりする。
 田島は考えた。待たない方が月日の流れが早い。
 やはり、忘れないで、覚えている方が、時の経つのが遅い。だが、これはただの楽しみで、スケジュール帳に書くようなことではない。
 今月、意外と冴えなかったのは何か事情があるのかもしれない。中休みというか、一寸手を抜いたのか、これといったものがない。
 今月は四月。これはいいものが出るはずなのだが、大人しい。しかし、三月は賑やかだった。すると五月に期待がかかる。低調だったので、次の五月に盛りあがるのかもしれない。
 田島はそれを考えると、ますます五月が楽しみになる。すると、半月がなかなか経たないことになるのだが、期待する期間が長い方がいいのかもしれない。急いで五月になってしまうよりも。
 それで、田島は暇なので、五月はどんなものがあるのだろうかと、予測した。何が来るのかは大凡分かっている。問題はその展開だ。
 そのものよりも、期待し、勝手な想像をしているときの方が楽しいのかもしれない。そのものを見てしまうよりも。
 
   了
 


2022年4月14日

 

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