小説 川崎サイト

 

朝の散歩


 雨のしと降る寒い夜。一夜明けると初夏の暑さ。
 岩田は季節が段跳びしたので、付いて行けない。階段を上がれない。
 急激な温度の変化。ただ寝起きなどでそれほどは感じなかったが、朝方になるほど寝苦しくなり、汗ばんだ。
 外に出ると、よく晴れており、カンカン照り。昨日の服装では暑すぎるのだが、昨日のまま。一日で春から夏になるわけがない。
 しかし、朝の散歩中、流石に暑くなり、羽織っていたものを脱ぐ。昨日はその上着でもまだ寒かったのだ。
 岩田の朝の散歩は長い。買い物などを兼ねるため。それと朝のご飯のおかずを買わないといけない。これは作り物があるのだが、もう一品欲しい。
 最近は煮魚をよく買っている。朝から贅沢なのだが、食欲があればこそで、なければそんなものなど買う気はしないだろう。お茶漬けだけでもいいほど。食べることの楽しさなど、食欲のないときは出てこない。
 買い物や用事の前に行きつけの喫茶店に入るのだが、以前はそこでモーニングセットを食べていた。コーヒー代と同じ値段で、トーストが付いてくる。その店はゆで卵は付かない。
 選べるわけではない。最初から作っていないのだ。これは面倒なためだろう。パンなら、焼けばいいだけ。バターかマーガリンを塗る程度。
 岩田はそれを朝食としていたのだが、それだけでは頼りない。それにずっと同じものだ。最近は煮魚だが焼き鮭でもいい。そして味噌汁と漬物。一度そういうのを何処かの食堂の朝定食で食べると、これだな、と思い、その後は、喫茶店のトーストはやめた。
 しかし、朝食代が少しかかる。岩田は以前から自炊をしているが夕食だけで、昼はパン程度。また外食も多いので、毎日作っているわけではない。
 当然、弁当を買ってきて食べることも多いが、最近はスパーへ行くようになり、外食は出先で食べる程度になった。
 さて、岩田の朝の散歩。色々と用をこなしながら、町内をぐるっと一周しているようなもの。行きつけの店は決まっており、その移動中が散歩。
 また、通り道に神社があり、その境内をぐるっと回るのも、日課になっている。お参りはしない。
 しかし、こういうのを入れている方が、何となく好ましい。お参りしないのだから目的もない。ただ樹木が多いので、気持ちがいい。
 こういうことを毎日やっていると、その日の体調などもよく分かる。
 この朝の散歩コースは、行けるだけでも充分だ。特にこれといったものはないのだが、岩田は毎朝、それを楽しみにしている。
 
   了

 


 


2022年4月28日

 

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