小説 川崎サイト

 

メインターゲット


 いつも気にしているメインターゲット。ある日、すっと横から入り込んだ新しいもの。新田は最初はそれほどでもなかったが、気になりだした。
 メインターゲットとほぼ同じもの。これは受け止め方で違うのだが、新田が気に入っているものと同じ傾向。
 新しいだけに新鮮。そちらの方が今は気になっている。メインターゲットには慣れ、少しくたびれてきた。それ以上の展開が期待できなくなってきたこともあり、最近は義務のようになっている。安定はしているのだが、小手先だけ。
 それが伸び盛りの頃はよかった。それと同じ状態でどんどん前へ進んでいく新たなターゲットを見付けたとき、そこで世代交代だと感じた。
 新田が接しているその世界。メインも長くは続かない。交代時期が早い。あるところで消えてしまう。もう伸び代がないためだろうか。
 それでも定番中の定番になっているので、まだまだ寿命はある。しかし、実際にはそのあと来た少しだけ世代差のあるタイプが、一気に登ってくる。
 新田はそれを見て、今までのメインターゲットが色あせてきたように感じた。当時は比べるものはほぼなかったのだ。しかし、それも長くは続かない。メインターゲットのナンバーツーやスリーからではなく、もっと下の方からいきなり現れる。
 これは時代もあるのだろう。数年前よりも、より今の状況に合ったものへと洗練され、伸ばすところを心得ている。ツボだろう。つまり、絞り込んできたのだ。
 新田の接しているその世界。これが世界の全てではないし、世の中の風潮でもない。その逆になっているものもあるだろう。また、昔から殆ど変化のないものも。
 また、その世界そのものが、もう消えてしまった場合も。
 多種多様。パターンも一つではない。そこで通用する常識が、他では通じなかったりもする。
 消えてしまった世界、これはジャンルでもいい。カテゴリーでもいい。
 あれほどピラミッド構造のように階層が多かったものが、たった一つになってしまった例もあるだろう。
 また相も変わらず、ずっとあり続けるものでも、そのものは変わらなくても、受け止め方が時代によってどんんどん変わってくる。
 新田は新たなターゲットを発見したとき、そんなことを思った。対象も新田も急激ではなくても、何らかの変化をしていることを。
 しかし、よくある話なので改めて言うほどのことではないが、実体験すると、より実感するものだ。
 その世界が、たわいのないものでも。
 
   了

 




2022年5月8日

 

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