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不審な目覚め
「まだこんな時間か」
坂田は枕元のスタンドを付け、目覚まし時計を確認した。確かにまだ夜中。夏の夜は短いとはいえ、その時間は暗い。明け方までかなり時間がある。
「いつ寝たのだろう」
坂田はいつもの時間になったので、寝床に入った。だから何かしていてうたた寝したわけではない。だが、記憶が少し飛んでいる。
「寝付けなかったはずだが」
それは覚えている。これでは起きたときが大変だろうと。
睡眠不足は翌日一日中影響する。それで何とか眠ろうと思ったのだが、そう思えば思うほど、またそのように仕掛けたり、持ち込んだりしようと作為するほど頭が冴えてしまう。
そして、そういう寝ようという気を捨てたとき、落ちたようだ。これは寝よう寝ようと頑張ったので、疲れたのだろう。だから、無駄ではなかった。
「しかし、どうしてこんな中途半端な時間に目が覚めたのだろう」
坂田は眠れば朝まで起きない日が多い。殆どがそうだ。
「寝苦しかったんだな」
寝汗をかいていた。掛け布団が重いのだ。夏布団の季節になっているのに、そのままのため、暑くて目が覚めたのかもしれない。
梅雨時なのだ。ただでさえ蒸し暑い。
しかし、そんな暑苦しい夜は何度か既にあった。そのときは目を覚まさなかった。蒲団を蹴ったり、ずらしたりしていたようだが、覚えていない。
「別のことで目が覚めたのではないか」
坂田は昨日のことや寝る前のことを思い出した。足を伸ばして寝ている状態ではないような気がしたし、また枕を高くして寝ている状況ではないような。
しかし、昨日、特に変わったことはなかった。それにこんな夜中に起きても何も出来ないだろう。
起きたついでなので、トイレへ行く。
そこで身を起こしたため、完全に目が覚めてしまった。
まさか、こんな時間から起きて、何かせよということではあるまい。そんな用事はないはず。
また、こんな夜中に出掛ける用事もない。ただ単に夜中に目が覚めただけ。夜中に何度か目を覚ます人もいるだろう。坂田は滅多にないが、その滅多に今夜は当たったようだ。
こういうとき、理由を考えたくなる。最初に思い付いたのは、暑くて寝苦しいので、目が覚めたという妥当な答えだ。実際、それしかないだろう。
考えても無駄なので、そのまま蒲団に入り、目を閉じた。すると、すっと落ちていく、その落ち際が分かる。これは寝てしまえるぞと。
そして、朝、坂田は目を覚めた。室内は既に明るい。目覚まし時計を見ると、かなり遅い。これでは遅刻だ。寝過ぎたのだ。
大事なこと、昨夜、目覚ましを切ったままにして寝てしまった。これだったのか、と坂田は苦笑いした。
了
2022年6月22日