小説 川崎サイト

 

色眼鏡


 人は色眼鏡でものを見ている。物事も。
 色の付いた眼鏡。サングラスでなくても、薄く色の入った普通の度付きの眼鏡もある。
 しかし、目に合うかどうかの眼鏡の話でもなく、またどんな色がサングラスとしての色眼鏡にはいいのかを言っているわけではない。
 色眼鏡で人を見る。の、あれだ。この場合の色は色即是空などの色と同じ意味。現れを見ているようなものだが、その場合、その人の色が加わるというか、フィルターを掛けて見ているようなもの。このフィルター、透明ではなく、色が付いている。
 その人の色で見ているのだが、実はその方が見やすいし、認識しやすい。その人の見方というか見え方。慣れ親しんだ把握方法とか、パターン認識とかで、そういうのは経験により出来てきたのだろう。
 そういう見え方しか出来ないとか、そういう見方しかできないというのもあるが、そこまで固定していない。なぜなら経験で出来た色眼鏡なので、違った経験をすれば、見え方も更新されるだろう。
 それ以前にこの色眼鏡がないとよく見えない。透明な眼鏡では像が写っているだけ、見えているだけで、何かに当てはめるには色眼鏡がいるのだ。
 だから色眼鏡を外すと生きているのか死んでいるのか分からなくなるので、色眼鏡は必要。
 それでやっとものや物事が分かる。ただ、固有の色眼鏡なので、本当の事物とはまた違うのだが。
 色眼鏡で見る。それ以外の見え方はない。色即是空と言えるほど悟った人でないかぎり。
 しかし、そんな人はリアル世界では生きていけないだろう。
 問題があるとすれば色眼鏡の質とかだ。いい色眼鏡と悪い色眼鏡があるわけではないが、これは生まれつきも入るが、結構変えられる。
 だが、その人にとって役立つ色眼鏡が一番だろう。その人がそれが一番見やすい眼鏡なら、その眼鏡を掛けるはず。
 まあ、寝ているときでも、外せなかったりする。夢の中でも色眼鏡をかけたまま。
 ただ、完全に寝ているときは、色眼鏡も使っていないが、ある物音とかで起きるとかもあるので色眼鏡を掛けているのだろう。
 どちらにして色眼鏡を掛けて物事を見る方が見やすいし。また、見やすいように、ますます色眼鏡の質を上げる。
 ある色に染まった世界。どちらにしても何らかの色に染まっているのだから、染まり方の問題だ。
 
   了
 
  





2022年7月4日

 

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