小説 川崎サイト

 

暑い


「暑いですねえ」
「何ともなりません」
「暑いので何もしないようにしておるのですが、日々のことはやはりやらないといけませんしね。最低限のことだけは」
「それだけでも立派」
「それだけで一杯一杯ですよ。あとはじっとしていますが、意外と動いている方が暑くなかったりするのでね。ここは考えもの。それで休んでいた用事を小まめにやり始めるのですが、やはり暑い。ちょっとならいいのですが」
「小まめは小さな豆の意でしょ。ネタとしては小さいので、用事としても小さい」
「いえ小まめとは態度のことです。大きさじゃありません」
「あ、そう。それで?」
「では用事をしているとき、暑さが来なかったのはなぜかと考えました」
「何でした」
「水仕事でした。洗い物とかで水を使う。しかし、他の用事では暑苦しくて、じっとしている方がまし」
「洗濯機なんて、直接水を触らないのでは」
「いえ、手洗なので」
「じゃ、座ってじっとしているときでも、たまに洗面所で手を洗いに行けばいいんじゃないのかな」
「そうですねえ」
「それが面倒なら、濡れたおしぼりとか濡れタオルを置いておく。そしてたまに拭く」
「今度やってみます。いいことを聞いた」
「いやいや、よく知られたことですよ。まあ、湿らせたおしぼりを冷蔵庫の中に入れておくのもいいでしょう」
「ああ、それは冷たそうでいい」
「まあ、あまり身体を冷やさない方がいいですよ。汗が出て勝手に体温は下がりますからね。この汗、出なくなれば、終わりです」
「流れ出すような汗は嫌ですが、汗ばむ程度ならいいです。確かに汗が引いたあと、寒さを感じたりしますねえ」
「あとは、座っているだけでもいいのですが、何かに熱中していると、暑さを忘れたりしますよ。汗が出ているのに、気にならなかったりとかも」
「集中ですか」
「夢中になってやっていると、暑さ寒さを忘れることもありますよ」
「いいことを聞いた。何か夢中になるものを探してみます」
「しかし、あまり熱中していると、暑さで体温が上がっているのに、気付かないこともありますから、注意が必要ですよ」
「熱中症ですね」
「何事もやり過ぎると、よくないのでね」
「色々といいお話し、有り難うございます」
「いやいや、私は言っているだけで、そんなこと実際にはやってませんよ。人の話など話半分で聞くことでしょうねえ」
「はい、参考にします」
 
   了

  


2022年7月5日

 

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