小説 川崎サイト

 

祭り


「祭りの終わった翌日はスッキリするというか、いい感じだね」
「何の祭りですか。この時期、何かありましたか」
「いや、個人的な祭りでね」
「じゃ、何か祭られているとか」
「ただの娯楽というか、楽しみのようなものだ。神仏とは関係ないが、何事も無関係ではないので、何処かで繋がっているかもしれんが、その感じは私にはない」
「祭りの後というのは気が抜けた感じがするらしいですが、僕もその規模の祭りは参加したことはありませんが、イベントならあります。運動会とかもそうです。僕は足が速いので、ほぼ一番です。でも万が一ということがありますので、緊張しますがね。それで無事にやり終え、一番になった翌日は、気が抜けたような、張りをなくしたようになります」
「ああ、それはいいですねえ。私もまあ、イベントに近いですが、そんな規模じゃありませんし、一人だけの祭りです。他に人はいません」
「昨日、それが終わったのですね」
「次は三日後、あるいは四日後です。その気になれば今日も出来るのですが、もう満たされているので、それは難しい。でも一日置けばやろうと思えば出来ます」
「じゃ、始終祭りじゃないですか」
「三日後なら、出来ますが、出来ない日もある。それで四日後に伸ばしますが、それでもまだ出来ない。五日後も駄目。一週間後、やっと出来たりします」
「それでも頻繁ですねえ」
「でも、毎日が祭りというわけにはいかないのです」
「一体何をされているのですか」
「それは、言っても個人的なことなので、分からないと思います。なぜそれが祭りになるのかと」
「あ、はい」
「実は祭りと言っていますが、本当は違うのでしょう。しかし、私にとってはそれがお祭りなのです。無事に祭りを終えればほっとする。翌日は、気が抜けたようにはなりませんが、清々した良い気分です」
「その祭り、教えて下さい。僕にも出来ますか」
「出来ると思いますよ。ただあなたはそれを祭りだとは思えないかもしれませんがね」
「是非、教えて下さい」
「言えば、この祭り、終わってしまいます。だから言えないのですよ」
「はあ」
「悪いですねえ」
「いえいえ、僕もそんな祭り、探してみます」
「それがいいでしょう」
「はい」
 
   了




2022年7月12日

 

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