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普通の夏
「暑いですねえ」
「今年の夏はじんわりときます。特に暑い日はないのですが、長く続きます。普通の暑さが」
「普通の暑さですか」
「夏だから、こんなものだろうというレベルの暑さです。特に高温じゃないし、低温でもない。猛暑でもないし、冷夏でもない。平凡な暑さ。しかし、これが続くと、結構効いてきます」
「猛暑が続く方が厳しいでしょ」
「猛暑日は続きません。ずっと暑いわけじゃない。暑すぎて、長持ちしない」
「でも、普通の暑さプラス、たまに猛暑。こちらの方が普通の暑さが続くよりも、平均気温も上がるでしょ。猛暑分」
「普通の暑さ、それほど警戒していません。油断しています。猛暑になっていると、それなりに構えます。まあ、暑いので、外出は控えるとか。外に出るにしても、収まった頃に、とか。部屋の冷房もそうでしょ」
「なるほどねえ、それほど暑くなければ、気構えない。そういうことですか」
「しかし、暑いことは暑いのですが、避けるべき外出をしてしまう。炎天下に散歩などもできそうですし。これは暑さを甘く見るため、かえって暑さにやられるのです。普通の暑さでも暑いですからねえ」
「普通というのは油断出来ませんなあ」
「まあ、普通にしておればいいのです。普通の暑さに対しては普通に」
「甘く見るのがいけないのですな」
「強い人が意外と普通の人に負けたりします。これも普通を甘く見ているためでしょう」
「普通なので、強くないでしょ」
「相手が手を抜き、相手が弱くなってくれるのです」
「油断しない強い人なら問題ないですねえ」
「しかし、何処かで甘く見ているでしょ。この相手は楽だと。普通ですからね。こちらの方が強いのですから。これは楽でしょ」
「じゃ、受け止め方ですねえ」
「まあ、そういうことです。今年のような普通の暑さ。これも受け止め方です」
「でも、もの凄く暑い夏よりも楽です」
「まあ、そうなんですがね」
了
2022年8月5日