小説 川崎サイト

 

ゴースト人

川崎ゆきお



「誰もいない…は、怖いですねえ」
「不気味だね」
「どうしてでしょう」
「ゴーストタウンとか」
「なぜでしょう」
「ゴーストタウンが怖いのは、幽霊が出るためじゃない」
「誰もいないと幽霊でも出そうですねえ」
「幽霊が出るからゴーストタウンになったんじゃないだろうけどね」
「ゴーストタウンという場所が怖いんですね」
「どうして人が住まなくなったのか、その原因が怖いのかもしれない」
「人が寄り付かない場所もそうですか」
「人がいてもいい場所にいないのが怖い」
「原因が怖いのですね?」
「人が避ける場所は、やはりヤバイ」
「避けないといけない原因が怖いんですね」
「その原因はまちまちだ。決して幽霊が原因じゃない」
「人が寄り付かないから、幽霊が寄り付くんでしょうかね」
「それは幽霊に聞いてみなければ分からんが、そこに出る理由がないだろ」
「幽霊以外の何か得体の知れないものが入り込んでいるとかは、どうです」
「魔だね」
「魔性のものですね」
「雑多な何かだ」
「いるんでしょうか?」
「さあ」
「じゃ、雰囲気のようなものでしょうか」
「そうだね。不気味なとか、怪しげなとか」
「バーチャルなものですね」
「そうだね」
「イメージの世界なんだ」
「そうかもしれない」
「元気がないですねえ」
「この種の話はしない方がいいよ」
「怖い話、好きなんですけど」
「ああ、怖かったで留め置くのがよい」
「どうしてですか」
「あっち側へ行ってしまうからだ」
「幽界ですか」
「何のメリットもない世界だ」
「別に儲けようとは思っていませんよ」
「ちょっと怖い雰囲気を楽しむ…そこまでだ」
「何か思い当たることでも?」
「ゴーストタウンは人が寄り付かない町だ」
「はい」
「人が寄り付かない人は?」
「ゴースト人」
「私がそれだ」
「僕が寄り付いているじゃないですか」
「君はゴーストタウンを見に来る感じで、来ているだけだよ」
 
   了


2007年11月02日

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