小説 川崎サイト

 

大物小物と中物


 大物ではないが小物でもない。その中間よりも大物に近いタイプ。
 それを中物とは呼ばない。めし屋でご飯を注文するときなら大中小とあるが、中はいわばレギュラーサイズ。そういう分け方がないところでは中か小が出るだろう。
 さて、大物の話だが、大物とは言われていないが力のある人がいる。これは大物の出来損ないではなく、少しだけ劣るのだろう。何かが。
 それは背負っている背景の違いだけで、本人の力は大物を超えているかもしれない。
 また、大物になりそうな小者もいる。今は小物だが、将来は大物を超えそうなタイプ。しかし、これは先の話。
 中物という分け方はないが、中間というのは幅が広い。大物に近い中間もあれば、小物に近い中間もある。
 岩田という人は中物だが、大物に近いタイプ。だが、大物になれないのは人柄に問題がある。小物のような動きをするためだ。大物らしき振る舞いではなく。
 岩田の上にいる大物は見るからに大物然としている。しかし、力量は岩田の方が上。ただ、人脈がそれほどないため、総合点では負けてしまう。人を動かす力はあっても地盤が弱い。
 岩田とその上にいる大物の座間とは仲がいい。実際には岩田が船頭で、座間の人脈で動くという感じだ。で、狭間は何だろうということになる。
 これはお飾りではないが、まとめ役の適当な人としていいポジションにいる。座間を置くことで、纏まりが出来る。つまり結び目。
 だから座間は何もしない大物。また何もしなくても大物なのだ。
 また、座間が後にいるだけで、信用度が違う。安心感が出る。
 結局ドタバタやっているのは中物の岩田で、奔走したり、手配したりと、殆どの指揮は岩田が執っている。大将の大物の座間は座っているだけ。だから座間ではないが。
 人には背景がある。岩田はその背景が弱いので、人として強くても、座間には及ばない。負けるということだ。しかし、個人的な力では完全に勝っているのだが。
 岩田はそういうことで勘違いし、取って代わろうとは思っていない。賢い人なので、そんなことは百も承知だ。
 
   了






2022年8月23日

 

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