小説 川崎サイト

 

更新


「村田さんなのですが」
「村田君か、まだいたのかね」
「部下じゃないですか」
「そうなんだが、あまり役に立たん」
「少し古い人ですからねえ」
「彼の同期や後輩は、更新しておる。今では他の部署でそれなりの役付だ」
「後進ですか」
「後に後退したわけじゃない。前に進んでおらんだけ。そのスキルを取っていない」
「ああ、更新ですか」
「まあ、功臣だとも言われておるがね。上からは」
「どの、コウシンですか」
「昔、大きな手柄を立てた人だよ」
「その村田さんなのですが、どうしたらいいのでしょうか。私の直属になっていますが、扱い方が分かりません」
「村田君は忠義一筋。だから切るわけにはいかん。上がね」
「しかし、あまり役に立ちません」
「だから、更新しておらんからだ」
「そうですね。古いシステムのように」
「まあ、それほど古くはないが、一昔か二昔前のやり方だね」
「何とかなりませんか」
「まあ、無視しておけばいい。そのうち何かで役立つかもしれんから」
 その後、どうしても上手くいかないことがあり、誰がやっても頓挫していた。
 それで村田の出番になる。もう人材が村田しか残っていなかったのだ。だが、最後の切り札ではない。役に立たないので、やらせなかったのだ。
 しかし、相手はころりと転がってきた。どうやって村田が懐柔したのかは分からない。
「どういうことだ。上手くいったじゃないか。村田君は何をしたのだ」
「はい、私の想像では、更新していないのが幸いしたのかも」
「え、どういうことだ」
「相手のシスレムも古くて、ちょうど村田さんと同じだったのかも。それで相性がよかったのかもしれません」
「あ、そう」
 
   了






2022年8月24日

 

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