小説 川崎サイト

 

妖怪お邪魔虫


 秋を感じる頃、妖怪博士は寒さを感じた。風邪でも引いたのか、悪寒。寝冷え、身体が冷えた。
 こんなことでも妖怪と繋げてしまう。妖怪など入る隙はないのだが、隙間なら、いくらでも開けることができる。強引に。
 風邪そのものに邪が含まれている。具体的に。これは隙間など開けなくても、最初から邪の入り口は開いている。
 邪悪なもの、それは妖怪を差すものではなく、生身の人間にもいる。邪も悪も具体的なものではなく、形がない。物として。
 そこが弱いが、邪悪は邪と悪とややこしいものが二つ重なっている。この二つから派生する言葉、ろくなものはない。
 邪魔などはそれほど強いタイプではないが、存在悪のようなもの。
 お邪魔と言えば、もう少し柔らかくまり、凶暴性はない。お邪魔虫というのもある。何でも後ろに虫を付ければ、それなりに聞こえ、そういう虫がいるとは思えないが、虫なので、形がある。ここからが妖怪の世界。
 部屋にお邪魔虫が来ている。または、いる。これは人間であることが多い。本当に虫がいることもあるが、別に邪魔をしなければ、ただの虫。
 では妖怪お邪魔虫はどんな形をした虫だろうか。妖怪博士の解釈では、それはゴキブリのような形をした虫に似た妖怪ではなく、人間の姿をしていると考える。
 ただ。邪魔な客とか、邪魔な人とかを人間扱いではなく虫のレベルまで落として見る。そのとき、虫顔に見えるのだろうか。相手が虫に見える、それはどんな映像だろうか。
 虫とダブって見えるが虫ではない。これは普通の人を猿だと思って見ていると、そういう猿がいるよう見える。
 しかし、虫の種類は多く。その人が抱く虫もイメージは様々。そのため、お邪魔虫も妖怪としての形を結びにくい。
 ただ、蟻のような顔をした人とか、バッタのような、または蜂のような顔の人はいる。
 昆虫顔、虫顔の人はいるが、そう思って見なければ、出てこないこともあるが、第一印象から、これは虫だという顔も確かにある。
 悪魔も動物や虫に近い顔をしていたりする。しかし、本当の動物などとそっくりなら、怖くはない。人に近い顔だから、怖い。
 さて、お邪魔虫という妖怪、どんな形をしているのかと、妖怪博士は考えたのだが。見る人によって違うのだろう。
 ただ、人を虫扱いすえうのはよくないが、妖怪扱いにすることで。収まりがいいのかもしれない。
 
   了





2022年8月25日

 

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