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レベルを落とす
「少しレベルを下げれば、範囲が拡がりますよ。あまり高いところにいるよりもね」
「どんなレベルですか」
「基本的なレベルですよ」
「基本とは」
「ベースですよ」
「はあ、ベース。それを下げれば範囲が広くなるのですね」
「そうです。そちらの方が賑やかですよ。バラエティー。ベースを上げると、限られてきますからね。レベルは高いのですが、高さを必要としなければ、賑やかで、範囲が広く、色々と出来る方がいいでしょ。上のレベルには負けますがね。しかし、上には上がいますので、これはきりがない。いくら上に行っても負け放題です」
「何処まで下げてもいいのでしょうか」
「それはあなた次第。これ以上下げるとまずいと思うところまですよ。一応成立しているレベルです」
「成立とは」
「ああ、これでいいかと思えれば、成立です。これは人も決めますが、自分で決めてもいい。下げすぎると嫌な場合は、それ以上下げなくてもいい。キワでいい、ギリギリでもいい。下げれば下げるほど楽になります」
「楽」
「楽しくなります」
「僕が苦しいのは敷居を上げすぎているためですね」
「さあ、それは私には分かりません。あなたではないので」
「あ、はい」
「物事を極めては駄目なんです」
「そこは最高レベルでしょ。もう上がなような」
「いや、まだあるのです。まだこれでは駄目だと本人がそう思えば、上はある。そんな上など、もうなくてもね」
「極めると、どうして駄目なのですか」
「さあ、私も極めたことがありませんので、よく分かりませんが、おそらく孤独で、自分と向かい合うようなものしか残っていないのではないかと。これは淋しいですよ。下の方でガチャガチャやっている方が楽しいでしょ。これは私の感想ですがね」
「参考にします」
「どのあたりがいいのかは、居心地の問題でしてね。そう感じるかどうかは、あなた次第。そこがいいと思えばそこがいいのです」
「思う。これがなかなか複雑で」
「いや、気持ちじゃなく、体がくつろげるような感じがいいのです。気持ちよりも体が落ち着くような。ここが落とし所なんですがね。腑に落ちるというでしょ。五臓六腑です。体です」
「難しそうですが」
「簡単ですよ。レベルを落とせばいいのです。すると、ほっとしますよ。体から緊張感がなくなり、いい感じです。まあ、普通の感じです。特に気持ちがいいとか悪いとかではなくね」
「何か修行が必要ですか」
「いや、落とせばいいだけです。楽になります。肩も凝らなくなる。それだけですよ」
「頑張ってやってみます」
「だから、頑張らないようにすればいいという話なんですがねえ。少し不真面目にやればいいだけですよ」
「はい、頑張りません」
了
2022年10月4日