小説 川崎サイト

 

全盛期

 
「世代交代ですねえ」
「ああ、いつの世にもそういうことがある」
「全盛期の勢いがなくなっています。これがそのままなら、少し古くてもいいのですがね。下り坂です」
「だから、全盛期があるのでしょう。そこから比べると落ちたとか」
「そうですねえ。でも維持出来るはずですが、敢えてそれをしていない。これはもう嫌なので、早く退きたいのかもしれません。しかし周囲が許さないので、何とか続けている。だからやる気がもうない。そこだと思います」
「何処だか分からないけど、だから世代交代で、新たに出てきたものが、勢いがあるので、それにとって変わる。それだけのことだよ」
「いや、勢いはまだあるのに、それをしない。これは薄々分かっていることですがね。そろそろ引き時。全盛期で終わってしまえば分かりませんが、長く居座った。だからどんどん期待薄になる。しかし、また以前に戻るのではないかと、多少は期待しています。しかし、毎回毎回、それはない」
「だから、世代交代の時期なんでしょ。それだけの話ですよ」
「引っ張りすぎたのかもしれません」
「それで、新たに出てきたものに、負けているのかね」
「はい、それに、まだまだ伸びるようなので、全盛期が何処にあるのか、分からないほどです。そちらの方が期待出来ます。それ以上伸びなくても、それを維持しているだけでも、充分です」
「引き際の問題か」
「周囲がまだ許さないのでしょう」
「トップなのかね」
「はい、エースです。最上位です」
「後に継ぐものが出てくるまで、待っているのかもしれないよ」
「既に出てきています。続々と」
「だから、バトンタッチ待ちなのでしょ」
「そうなのですが、勢いが落ちていくのを見ているのは辛いです」
「全盛時代に消えたものもあるのか」
「はい、あります。納得出来ます。もったいない話ですが、勢いが弱まるのは見たくありません」
「世代交代。よくあることじゃないか」
「そうですね。でも、全盛時代のまま終わらせた方が印象はいいですよ」
「君も粘っているじゃないか。もう勢いはないのに」
「あ、そうでした。見苦しいですか」
「いや、大人しくなったので、都合がいいよ」
「あ、はい」
 
   了



2022年10月21日

 

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