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段階を楽しむ
「杉田氏は期待以上の働きでした。これは凄いものがあります。そこまで期待していなかったのですが、それを遙かに越えています。二段か三段」
「じゃ、もう終わりだね」
「大活躍ですよ。凄い人材だと改めて思いました」
「だから、もう終わりなんだ」
「どうしてですか、杉田氏に何か弱点でも」
「私もその活躍は聞いた。完璧だ。弱点などない。よくそこまで辿り着けたものだ」
「だったら、終わりじゃなく、これからますます」
「落ちるね」
「はあっ」
「期待していた通りで良かった。期待以上は望んでおらなんだ。しかもそれさえも越えていた。これじゃ終わりじゃないか」
「そうなんですか」
「私が見た限り、その以上のものはもうない。これは不可能と言うよりも、もう上がないんだ。そこまで杉田氏は行ってしまった。あとはどうするんだ。あとがないじゃないか」
「どういうことですか。完璧に近いのですよ。誰も成しえないことだと言ってもいい。それほどの人材なのですから、今後も活躍してくれるはず」
「早すぎた。もっとゆっくりと登れば良いものを、全ての力を出してしまった。出し尽くしたといってもいい」
「それが悪いのですか」
「もう期待するような楽しみがなくなる」
「楽しみ」
「私のね」
「だから、終わりなのですか」
「杉田氏には引いて貰う。双六で言えば、もう上がりだ」
「それはひどい。杉田氏の力を認めないのですか」
「大いに認めておる。出来すぎるほど出来ておる。しかしじゃ、これは誰にでもやろうと思えば出来ることなんだよ。杉田氏に力があったからじゃなく、他の者は出し惜しみしておるだけなんだ。その気になれば杉田氏がやったことぐらいすぐに出来るんだ」
「何か、わけがわかりません。期待以上のことをしたから駄目なんですか」
「まあ、そうだ。そのため、もう今後の杉田氏に見るべきものはなくなる。それ以上のものがないのだからね」
「確かに誰にでも出来ますが、それには覚悟が必要ですね」
「その覚悟が早すぎたのだよ」
「それでも杉田氏がもう終わったとは思いません。最高潮ですよ。今が花です」
「それ以上の花はもうない。早く咲かせてしまったんだ」
「大成功するのも考えものですか」
「しかし、これは私の楽しみでね。伸び代のある人間が好きなんだ。そして伸びていくところを見るのがね。杉田氏にはもう見るべきものがなくなった。それだけのことだよ」
「ただの楽しみだったのですか」
「いかんか」
「いえ」
了
2022年11月22日