小説 川崎サイト

 

正統派の系譜

 
「正統派の伝統を踏みたいのですが」
「その昔は異端だったものかもしれんぞ」
「正統派も変わるのですね」
「長く続けば、それで正統派じゃ、主流派といってもいい」
「でも、正統派が以前は異端だったのが気になります」
「どのように」
「その正統派が異端だった頃の正統派が気になります」
「忘れ去られておるが、旧正統派の残党はまだいるだろうねえ。またそんなことも気付かず、旧正統派をやっておる人達もな」
「そういう旧正統派が復活することはないのですか」
「今の正統派が安泰ならね」
「今はどうなのですか」
「少し腐りかけておるが、まだまだ行けるだろう。新正統派というのが力を得だしておるがな。これは同じものだ、少し今風に合わせておる」
「新正統派と、旧正統派の違いはありますか」
「時代や背景が違うので、比べられんが、似ておるかもしれん。なぜなら正統派を批判する箇所もある。またその一部を否定しておる。これは旧正統派に近いな」
「じゃ、旧正統派が復活しているのではありませんか」
「いや、旧正統派のままだと、今では通じん。だから別物だよ」
「旧正統派に興味が湧きました」
「古きを訪ねるのも良いが、ほどほどにしなされ。時代錯誤になる。今の時代、それでは通じんからな」
「じゃ、良いところ取りします」
「それなら新正統派と同じじゃないか」
「そうでした」
「しかし、旧正統派も正統派も新政党派も、どうでもいいことじゃ」
「そうなんですか」
「全部入れればいい」
「ええっ?」
「全部ありで良いじゃないか」
「でも否定と肯定、水と油を一緒にするようなものですよ。相反したものですよ」
「人も世の中もそういうものじゃ」
「それは理解出来ません」
「理解してもせんかっても同じことじゃ」
「あ、はい」
 
   了

 
 
 


2022年12月1日

 

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