小説 川崎サイト

 

夢は願望の現れ

 
「最近夢を見ますか」
「よく見ることはありますが、最近は見ないですねえ」
「最後に見たのはいつ頃ですか」
「さあ、二週間ほど前でしょうか」
「じゃ、それなりに見ておられる」
「見ていたかもしれませんが、起きると忘れていますが、見ていなかったことしか、覚えていません。覚えていない夢って、あるんでしょうかね」
「あるんじゃないですか。寝ているとき、何かで起きてしまったとき、夢の途中だとすれば、そのときは覚えていますよ。途中で起きなければ、見たことも分からない。覚えていないとなります」
「途中で鍋の蓋を開けて、煮えているかどうかを見るようなものですか」
「そのたとえは、よく分かりません」
「失礼しました」
「夢は願望を現すと言われています」
「願望が夢となって現れるのですね」
「そうです。だから夢が少ない人は、あまり願望がないと言うことで、これはいいんじゃないですか」
「怖い夢とか、望んでいない夢なんかも見ますよ。これって願望じゃないでしょ。現実にはなかなか果たせないことを夢の中で実現するんじゃないのですか」
「願望タイプの夢と言うことで、他にも分け方があるのです」
「じゃ、全てが願望じゃないのですね」
「これも密かに望んでいることかもしれませんよ。だから隠された願望とかね」
「でも、怖い夢を見て、起きたとき、望んでいないことですし、逆でしょ」
「そこに隠された願望が忍んでいるのです。あなたの知らない無意識の」
「じゃ、何でもありですねえ」
「無意識は意識出来ません」
「そうですね。無い意識ですから。それって寝ているときもそうですね。意識がありません。夢を見ていて、その中での意識はありますが、昼間の意識とは違いますね。夢の中の自分の意識のような。だから、それも含めて夢なんでしょうがね」
「無意識を垣間見ることが出来ます。夢でそれがね」
「そうなんですか。でも予知夢とかはどうなんです。これって願望や無意識とかは関係ないでしょ。お告げですから。それに心の中ではなく、外の現実を知るわけですから」
「夢にも色々と種類があるのです」
「だから、何でもありなんですね」
「そうではないのですが、まあ、それはいいでしょ」
「最近色々と欲しいものや、やりたいこととか、気になっていることで、早く果たしたいとかが以前よりも多いのですが、夢の中に出てきませんよ」
「きっと見ているのですよ」
「覚えていないだけですか」
「そうでしょうねえ」
「じゃ、夢を見た効果がないわけですね」
「あるんでしょうねえ、きっと」
「頼りない話ですねえ」
「何せ夢ですから」
 その言葉を最後に、その夢から覚めた。
 
   了

 
 



2022年12月11日

 

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