小説 川崎サイト

 

ゴロゴロと転がっていた

 
 凄く価値があるものが、他の場所へ行くとゴロゴロ落ちていることがある。知っている人だけは知っているのだが、隠されているわけではなく、知ろうと思えば誰にでも分かる。
 何せゴロゴロと転がっているのだから、値打ちがないと思い、それは無視する。そんな虫のいい話などないと思うため。しかし、他のことで、それに似たような経験を持つ者は、もしかして、というのがある。
 難しい手続きをしないと手に入らないものが、いとも簡単に得られた、などの経験が一つでもあれば、一寸考える。
 しかし、その他の経験から考えると、それは希なことで、珍しいことで、例外に近い。
 だから、やはり、ゴロゴロと転がっている価値の高いものは信じにくい。だが、万が一もある。万に一つだから、殆ど無いと言うことだが。
 そのゴロゴロと転がっている場所へ行った人がいる。すると、間違いなく本物。本来入手さえ困難というわけではないが、値段が高すぎる。そのための代償が厳しい。しかし、ゴロゴロと転がっている場所なら、いとも簡単。
 これは何だろうかと、男は考えた。誰も来ないのか、また、来ても手を出さないのか。
 そんなはずはないと、思っているためだろう。目の前に宝があっても、俄に信じられないのだろう。それで、これは罠ではないかと考えたりする。または真っ赤な偽物。それを知っている人は最初から相手にしない。
 だが、本物か、偽物かは見れば分かる。ゴロゴロと転がっているものはまさに本物。一目瞭然で、疑いようがない。それなのに誰も手を出さない。
 では、別の何かがあり、それが邪魔をしているのだろうか。きっと危ないもの、危険なものではないかと。
 価値のあるものがゴロゴロしていること自体が駄目で、そんなに多くあると、値打ちが下がる。そのへんにある安っぽいものと同じ。
 やはり、それなりの苦労などを経た上で、やっと手に入れたものではないと、何かインチキ臭いことをしているようにみえる。
 男はそれを持ち帰り、実際に使ってみた。紛れもなく本物。この噂は拡がったのだが、ゴロゴロと転がっている場所へ行く人は希。それに危険を感じて、そのまま帰ったりしている。
 男は、その後、それを使い続けたのだが、想像していたような価値が目減りしていった。簡単に手に入れたためだろうか。
 また、自分だけが反則を犯しているような気になり、そのうち使わなくなった。そして、ゴロゴロしている場所に捨てにいった。
 
   了


 
 


2022年12月13日

 

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