小説 川崎サイト

 

知る

 
 色々なことが起こっているのだが、全部をリアルタイムで知ることは出来ない。少し遅れてもいいのだが、沢田の耳に入ることは限られている。それは誰もがそうだろう。新羅万雑をチェックし続けることは出来ない。
 大事なことを知らないまま沢田は過ごしていたとき、あるところから、それを知った。しかし、もう遅い。
 しかし知っただけ、まし。一生知らないままだったかもしれないのだ。大事なことではあったが知らなくても支障はないことだと気付いた。早く知っていても沢田にはどうすることも出来ないことなので。
 知らなければ、聞けばいい。しかし、その気も起こらなかった。それに知る手段がない。あるにはあるが、面倒なことをしないと聞き出せない。
 それに沢田はそのことにもう興味はない。もう必要なことではなく、過去の話。思い出の中の世界だろう。
 必要があるので知ろうとするが、その必要がなければ、そのままだ。偶然耳に入るとかで、知る程度。
 普段から気に留めていないのだろう。今は今で違うものに関心があり、その方面のことをもっと知ろうと積極的になる。これが消極的で、受け身だけになると、漏れが多い。開けている窓が狭いので隙間風程度。
 しかし、果たしてそうだろうかと沢田は考えた。今、知りたいと思っていることは、どうでもいいことが多い。本当に積極的に知らないといけないことは、知るのが怖い。
 だから、知っても大したことはないことばかりを知ろうとしている。安全なためだろう。
 しかし、それもある程度行くと、それ以上は知りたくないところに来る。
 知りたいことと知りたくないことがあり、知りたくないことはそのうち勝手に否応なしに知ってしまうことが多い。別に聞かなくても。
 それと知っていることの中味、深さやレベル。どの程度詳しいのかで、同じ知っているでも知っているが違う。沢田もそれを知っている。
 沢田の知り方は浅い。聞いたことがある程度が圧倒的。そういうものがある程度なら知っているが、中味までは詳しく知らない。
 また、良いものか悪いものか程度の知り方もある。また沢田の好みに合うかどうか程度の判断。中味ではなく、その上辺だけでもう分かってしまう。
 まだ話したことのない初対面の人。顔を見ただけで、もう分かってしまう。中味を見ないで。それ以前の好感度のようなもので決まる。
 これは動物的直感かどうかは分からないが、これまでの経験や沢田の気性などで自動的にそう判断してしまうのだろう。
 さて、沢田が知らなかったことで最近知ったことだが、下手に知ると、しばらくの間は、そのことを考えてしまう。
 知ってしまうと、しばらく尾を引くものと、引かないものがある。
 いずれにしても全部を全部知ることも、思うことも出来ない。それには何人もの沢田が必要だろう。
 
   了
 

 
 


2022年12月14日

 

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