 |
 |
本命
想像しているだけの本命。実際に行動を起こすと、シュンとなる。予定通りには行かないのは、プレッシャーがかかるためだろう。
思うだけはただ。ただ、実行に移すとなるとただでは済まない。
そこで谷川はそれに代わるような、もう少し簡単なものに手を出そうとした。または目先を変えて、別のものに。
だが、どうも気が乗らない。本命がまだ生きている。この根は深く、そして強い。
そこを何とか谷川は誤魔化そうとしたが、誤魔化しきれない。何処が寄り道、余計なことをしているようで、そのときはいいが、すぐに、やはりこれではないと感じた。
そういう経験を何度かしていたので、それを活かせばいいのだが、同じ状況ではない。それに本命の雰囲気も違う。
だが、そのとき、頑張って本命を選んだ場合、それほどでもなかったりする。頑張りすぎ、期待しすぎたのだ。
しかし、本命以外に手を出した場合、本命を選んでおけばと、いつまでも根に持つ。
要するに思ったことをストレートにやるのが一番いい。その場合、即決が望ましい。間があると、いろいろと考えてしまい、大層になる。
それで今回。本命に変わるもの、本命に近いものや、本命よりも良いものなどを色々と想像したのだが、行動はしていない。想像しただけ。
そんなことを思っているうちに、すっと何かが落ちたのか、ストレートにすんなりと本命へ行く決心が出来ていた。それしかないような感じがしたため。
だから、これは従うしかない。他にないのだから。そのためか、頑張っていない。躊躇もないし、大きな期待もない。
それしかないため。ここまで詰めれば大したものなのだが、これは他のことを想像しているうちに、元に戻った感じで、ただの堂々巡り。
そのため、ストレートではなかったが、想像しただけで動いていないのだから、迷ったが、実行しなければ、最初の思惑通りに素直に向かったことになる。
これで、本命がいつまでも、いつまでも何処かに残り、やはり本命を選んでおけばよかったという後悔だけは消えるし、それがチラつかない。
その証拠に、谷川は谷川の水のようにスッキリとした。飲んだわけではないが。もうこれで、わだかまりがなくなる。
するとこれは気持ちの上だけの話なのかと、やや不安になるが、本命だけに、一番いい選択。その良さのレベルがどうあれ、それが最善。それしかないのだから。
しかし、他にもあった。以前の谷川なら、そちらを選んでいたかもしれない。そのときと谷川は変わっているので、本命の流れも、実は紆余曲折している。
しかし、その流れは変わらない。同じ水源から来ている。道筋が少し変わるだけ。
清さというのがある。浄さでもいいし、潔さでもいい。これは谷川の中で流れている本来の清流かもしれない。たまに濁流に入り込むこともあるが、それがあるため清流が目立つ。
また、それを谷川の本流だと言ってもいい。なぜその流れになるのかは、谷川にも分からないが、そうなってしまうところの何かがあるのだろう。そう思ってしまうようなもので、ただの反応かもしれないが。
しかし、谷川は本命がどれだかを何となく分かっている。
自然と決まるものを弄って余計なことをしない方がいいのだろう。
了
2022年12月26日