小説 川崎サイト

 

ハプニング

 
 冬の青い空。少しグラデーションがかかり、濃淡が滑らかに引き延ばされている。青墨を刷毛で撫でたように。
 冬の寒空の印象がないのは陽射しが来ており、しかも西日の斜光。これが塀にいい角度で当たり、より輝きを見せている。ただの反射なのだが、塀にそんな明るい色が付いていたのかと思うほど。
 寒いはずだが、西日が暖かい。西田はそれを背に受けている。そんなことを思うのは余裕があるためか、または元気なためかもしれない。
 この元気さは勢い。気に勢いがあり、積極的に何かをやりたい気になる程度。要するにやる気が出ている。気力満々とまでは行かないが、いい案配だ。
 西田は一寸したイベントのようなものをこなしたあと。
 これが少しだけプレッシャーがあったのだが、それが抜けた。そのせいもある。西日だけではなく。それが重なったのだろう。
 もし、そのイベントのようなものからの帰り道、西日ではなく、雨が降っていたとすれば、また違っていたはず。やはり揃わないと。
 そのイベントのようなもの。少しだけハプニングがあった。予定にない事が起こった。
 しかし、その可能性は分かっていた。だから驚くほどのことではないが、できれば避けたかったこと。
 そのハプニングのようなものも悪い結果ではなく、良い結果に終わったので、難なきを得たどころか、いい案配で終わった。そのハプニングのようなものが起こらなかったときよりも。
 しかし、ハプニングなので、結果が分かりにくい。とんでもないことが起こる可能性もある。だから安全地帯ではない。
 敢えて虎の尾を踏むかもしれないのだ。しかし、結果的には人懐っこい猫だった。
 それで、戻り道の青空を見たとき、先ほどのことも重なり、いい感じになっていた。
 この感覚は長くは続かないのだが、それなりに覚えているはず。今回はよかったが、悪かった場合も覚えている。
 そういうことが過去にあるので、プレッシャーがかかる。そして、今後もそれはあり続ける。
 イベントのようなもの。それは何か芸をするわけではない。日常の中のワンシーンとして定期的に発生するような行事のようなもの。
 決まり切った動きなら問題はないが、たまにハプニングが起こる。だから同じ日常事だが、一寸扱いが面倒。
 しかし、いつもの日常事の中で起こる本当のハプニングもあり、こちらの方が意外性があり、驚きも大きいだろう。
 ハプニングが予想されるイベント。これはある程度分かっているので、その心づもりで臨むので、意外性は少ないかもしれない。
 西田は、そんなことを思いながら、後方の西の空を見ると、眩しかった太陽も、そうではなくなりかけていた。
 
   了

 


 


2023年1月14日

 

小説 川崎サイト